その合図は意味ないかも?愛犬にしっかり伝わる合図とは
その合図は意味ないかも?愛犬にしっかり伝わる合図とは
突然ですが、皆さんは犬に「オスワリ!」と合図する時に、言葉だけで合図しますか?
それとも、ハンドシグナル(手での合図)で合図しますか?
もしくはその両方で合図する人もいるかもしれません。
実はこの合図の出し方によって、犬の学習の仕方が大きく違ってくるのです !!!
特に、言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教えている飼い主さんに、
間違ったしつけの仕方をされている方を見かけるので、今回は
”言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教える場合に気をつけるべきこと”
について書いていきたいと思います!
「なかなかオスワリできる様にならない…」
「オスワリできる時とできない時がある…」
などの悩みを持っている方は、役に立つことがあるかもしれません!
『学習の仕方』とは?
まず、上に出てきた『学習の仕方』という言葉について少し補足をしていきたいと思います。
『学習の仕方』と言われると難しいかもしれませんが、例えば
「ハンドシグナルで『オスワリ』を教えている犬に、言葉で『オスワリ!』と言ってもオスワリしてくれない」
というのは自明ですよね。
つまり
「手のサインをみる→オスワリする(→ご褒美もらえる)」
というのがハンドシグナルによる『学習の仕方』というわけです。
同様に
「「オスワリ!」といわれる→オスワリする(→ご褒美がもらえる)」
というのが、言葉による『学習の仕方』というわけです。
また、ハンドシグナルで学習している犬でも、
・犬の顔の前に人差し指を立てる
・親指と人差し指でオヤツをつまむ形を作って犬の鼻先から上に手を上げる
・犬の正面に自分の手の平を地面と平行に上に向けておく
などなど… ハンドシグナルの違いも『学習の仕方』の違いとなるわけです。
この『学習の仕方』が今回のメインのお話になるので、しっかりと確認してください!
今日お話しをしたいのは
言葉と同時にハンドシグナルで犬に合図を出している場合の話。
「オスワリ!」と言いながら、同時に手の合図も犬に対して送っている場合のパターンです。
この時、飼い主の皆さんは犬が「オスワリ!」という言葉をちゃんと理解していると思っているかもしれません。言い換えると「オスワリ!」という言葉と、「犬がお尻を床に付けるという行動」がちゃんと結びついているのだと思われているのではないでしょうか?
『視覚情報』と『聴覚情報』による学習
では、言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教える場合を考えていきましょう。
言葉とハンドシグナルでオスワリを教える場合の『学習の仕方』はどうなると思いますか?
「そんなの、「ハンドシグナルと『オスワリ!』の掛け声の両方が揃う→オスワリする(→ご褒美)」に決まってんじゃん!」
と即答されたかもしれません。
しかし、それ、実は間違いなんです。
(厳密には”間違い”ではないのですが、ここは厳しく…)
犬にとって、『目から入ってくる視覚情報』と、『耳から入って来る聴覚情報』では圧倒的に視覚情報の方が強いのです。
そのため、言葉の合図と同時にハンドシグナルを出していると、実は犬にはハンドシグナルしか届いておらず、言葉は犬の中に届いていません。
ハンドシグナルと『オスワリ!』の掛け声の両方でしつけをしている飼い主さんは、試しにハンドシグナル無しで「オスワリ!」と言葉だけでオスワリを促してみると、座ってくれないないことが多いです。(座ってくれれば、今後ハンドシグナルはいらないでしょう!)
つまり、ハンドシグナルと『オスワリ!』の掛け声両方で『オスワリ』をしつけているつもりでも、『視覚情報』しか受け取っていないためハンドシグナルでのオスワリしか学習していないということなのです。
『聴覚情報』で学習させるには?
では、『聴覚情報』だけで犬にオスワリをしてもらうにはどういう『学習の仕方』をして行けば良いのでしょうか?
「言葉だけ使ってオスワリさせればいい!」
というのは最もなんですが、せっかくハンドシグナルを使って練習していたのでそれも活用してあげましょう!
その際には、犬の『時系列に沿って物事を結びつける』という習性を発揮してもらいます!
『時系列に沿って物事を結びつける』とはどういうことかというと…
例えば、
「外出しようと思ってリップクリームやハンドクリームを塗っていると、一緒に出掛けられると思って玄関に先回りしている」とか、
「化粧を始めただけで、犬が留守番を予期してソワソワし始める」とか、
「ご飯をあげようと思って餌の置いてある部屋に行っただけで、犬がハウスに飛び込んで待っている」
などなどはということです。
これらの現象は、犬が「順番に起こる出来事を時系列で結び付けて覚えている」ということをよく表しています。
この習性を活かせば…
↓
一拍置く
↓
その次にハンドシグナル
↓
犬が床にお尻を付ける
↓
イイコ!などの褒め言葉(もしくはクリック)
↓
ご褒美
の順番で反復練習をすることで徐々に言葉だけのオスワリに移行できますね!
この練習を繰り返すことによって犬は、
「オスワリ!って言われたから次は手の合図が来る!オスワリをすればご褒美貰える!」と学習を始めます。
そして、「オスワリ!」の言葉を言われただけで、先読みで犬がお尻を床に付けるようになります。
これで言葉の「オスワリ!」の合図だけで「オスワリ」という行動が完成です!
終わりに
いかがでしたでしょか?
今回は、”言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教える場合に気をつけるべきこと”に焦点を当てて、犬が受け取っている『視覚情報』・『聴覚情報』の観点から、最終的には言葉だけでのオスワリをしてもらう方法まで解説しました!
最後の「言葉だけのオスワリ」への移行で書いたことは理論的には正しく機能しますが、実際に教える時には様々な困難な点があるのも事実です。
特に『般化』という犬の特性を考慮してしつけをしていくことが大切です。
今回の記事で『般化』まで扱ってしまうと、記事の内容が膨大になってしまうので割愛しました…
「『般化』についても詳しく知りたい!!!」
という方は、こちらの記事を参照ください!
ハンドシグナルで犬が行動を取れるのでも、もちろん構いませんが、犬と自分の距離があるときなど、言葉の合図だけで犬に合図が届き、望む行動が起こせる方がベストかと思います。
そして言葉の合図だけで犬に学習させることを目標とする場合、ちょっとした自分の無意識の動きや目線が犬への合図になっていないか、細心の注意を払って練習をする必要があるでしょう。(自身のトレーニングスタイルをビデオに撮影してチェックすると良いと思います)
今までハンドシグナルを使っていた飼い主さん、言葉だけで犬に合図が伝わるように練習してみてはいかがでしょうか?
ワンちゃんと一緒に練習して、一つのことが出来るようになるって最高のコミュニケーションではないでしょうか。
また、たった一つのオスワリでも言葉の合図だけで出来るようになると、飼い主さんにも自信が付くと思いますし、犬と向き合う楽しい時間になるはずです!ぜひ頑張ってみてはいかがでしょうか?
この記事で意外に感じた部分は是非、ご自身が愛犬と接する中で確認して見てください!
そして、愛犬とより良いコミュニケーションを取れるように日々を過ごして見てくださいね!
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿