あなたの愛犬は、“どこでも”おすわりできますか?〜『般化』の必要性について〜

あなたの愛犬は、“どこでも”おすわりできますか?〜『般化』の必要性について〜

f:id:oka003:20190501232606j:plain

以前もこのタイトルで記事を書かせていただきましたが、その際は犬の優れた能力である『弁別』についてのお話でした。

 

例えば、「ペットボトル」と一口に言っても、円柱型、四角柱型などの形、300ml、500m、1ℓなどの大きさ、色、ラベルなどによって見た目には異なるため、犬にとっては同じ「ペットボトル」としては見えず、括りが出来ない、いう話でした。

 

まだご覧になっていない方や、『弁別』についてもっと知りたい!

という方は、こちらから記事が見れます!

 

こうした、『弁別』性が高いために、たとえ家の中で「オスワリ!」と言えばオスワリするようになっていても、外に出て「オスワリ!」と言うと、オスワリ出来ないという内容でした。

 

前回の記事でも、言葉の合図だけで犬が「床にお尻を付ける」という行動をとっているように見えていても、実は僅かな人の手の動きや視線を見ていて、言葉ではなくその動きや視線を弁別して「床にお尻を付ける」という行動を取っているのだというお話をしました。

 

そうした『弁別』に関する知識を踏まえ、今回は『弁別』に対する重要な概念である『般化』についてご紹介して行きたいと思います!

 

この、『般化』も、犬のしつけ・トレーニングを考える際には非常に重要な概念なので、一緒に考えて行きましょう!

 

そもそも『般化』とは?

f:id:oka003:20190501232710p:plain

以前の記事から繰り返しお伝えしているように、犬は非常に観察力に優れているので、『弁別』が本当に得意です。

言い換えれば、『般化」がとても苦手な生き物ということもできます。

 

そもそも、『般化』とはなんでしょう?

ブリタニカ国際大百科辞典によると…

 

 

心理学用語。『汎化』とも書く。

⑴条件付けの過程において、ある<u>刺激に対して特定の反応が起こるようになると、類似の刺激に対しても同じ反応が生起するようになる</u>。これを『刺激般化』という。これに対して、ある刺激に対し反応するように条件付けられたのち、その刺激に対して類似の反応が生起する場合、これを『反応般化』という。

⑵<u>『一般化』ともいう</u>。一般的概念が形成される思考過程。『概括作用』とも言われる。

 

(参照:般化(はんか)とは - コトバンク)

と書かれています。

 

つまり、『般化』とは一般化のことで、犬のしつけの場合、

ある行動を教えたら、それがいろいろな場面・状況でも起こるようになること

と言えます。

 

犬は人間とは違い、この『般化』の能力が高くはないので、ある行動をいろんな場面で起こしてもらえるように学習していく際には、この性質をきちんと理解しておきましょう!

 

般化学習の際に気をつけなければいけないこと

f:id:oka003:20190501233000j:plain

では、具体的に般化学習を行う際にどのようなことに気をつけなければいけないのでしょうか?

 

今回も、『弁別』の記事と同様に、オスワリを例に見ていきたいと思います。

以下に、般化学習するべき状況について、代表的なステップを挙げて行きたいます!

 

①ご褒美なしで練習してみる

 

前回の記事でも書かせていただいたように、ご褒美を持った手で誘導して犬にオスワリをさせていた場合、ご褒美を手に持たなくても、手の誘導がなくても、言葉だけでオスワリが出来るようにまずは練習します。

 

そのためには、言葉の合図→一拍置く→手の合図→犬がオスワリする→イイコ&ご褒美という順番が欠かせません。

 

「どこでもオスワリできるようになってほしい!」

という方で、般化練習を始めようと考えている方は、まずこの練習から初めてみてください!

 

 

②指示する姿勢・人・時間帯を変えて練習してみる

 

言葉だけでおすわりができるようになったら、次は同じ家の中で、指示をする人が姿勢を変えても同じオスワリの反応が起きるように練習していきます。

 

例えば、今まで人が立って「オスワリ!」と教えていたのに、いきなり寝転がって「オスワリ!」と言っても、まず犬はオスワリしてくれないでしょう。

 

なので、立った姿勢により近い中腰から、同じ練習を始めてみます。

 

中腰でもオスワリが出来るようになったら、次は立膝→次は座りながら→次はしゃがんで→最後に寝転がって…

と、少しずつ段階を踏んで練習していくと、犬もだんだんと練習を理解してくれます。 

 

また、指示する人の姿勢を変えながら練習をするのと同様に、指示する人を変えながら練習もしていきましょう。

 

指示する人が女性か、男性か、子供か大人かでも、オスワリできるかどうかは変わってきます。

 

「お母さんの言うことは聞くけれど、息子の言うことは聞かない」なんて話をよく耳にしますが、これも犬がお母さんと息子さんを『弁別』している証拠です。

 

 

オスワリができるかどうかは、練習する時間帯にも左右されます。

「日中のオスワリはすんなり聞いてくれるけど、夜中のオスワリはなんだか無視される…」

といったことは、時間帯による練習が足りていないことが原因かもしれません。

 

犬と人の距離も少しずつ変えたり、犬と人の向きを変えたりしての練習もすべきでしょう。たった一つのオスワリでも、家の中で般化のためにすべきことは山ほどあるのです。

 

そして、人が思っている以上に視線や体の僅かな動き、表情を犬に見られていることを認識してみてください。

 

 

いつでも・どこでもオスワリできるようにするためには、いろんな人・いろんな状況での「オスワリ」にも対応できるよう練習しておくことが大切です!

 

③指示する環境を変えて練習してみる

 

家の中で、上記の練習や様々なケースを想定した練習を通してオスワリができるようになったら、やっと外での練習に入れるようになります。

 

外での練習は、予期せぬ出来事や家の中では起こり得なかった状況が起こる中で「オスワリ」のトレーニングをすることになります。そうした細かい事柄に対しても犬は『弁別』を行なっているので、飼い主側もそうした点に注意しながら屋外でのトレーニングを行なっていきましょう!

 

終わりに

f:id:oka003:20190501233028j:plain

今回は、どのようにして『般化』の練習をしていくのかということを、前回の記事に引き続き「オスワリ」を例に解説していきました。

 

犬は本当に私たちがビックリするくらい、私たちの色々な行動や癖、動きを見ていますし、決まった時間に起こる出来事を予測する体内時計も持ち合わせています。

 

犬って本当にスゴイですよね!

一方で、恐怖・不安を感じるなどといったストレスを伴う般化は急速に進むので注意が必要です。

例えば、「ドッグランで白い犬に追いかけられて以来、白い物体がすべて怖くなってしまう」などと言うことがあります。

 

他にもチャイムの音の度に過剰興奮していると、チャイムに似た電話のベルの音などでも般化が起き、同じように吠えるようになったりします。これがストレスを伴う般化は急速に進むという例です。

 

犬が何かに対して恐怖を抱いていないか、怖い経験になっていないか、過剰興奮していないか、この点にも十分に気を付けて、日々のトレーニングを行う必要があります。

 

 

なので、本記事でも紹介してきましたが、細かい事柄にこそ注意を払って、一歩ずつ犬と一緒に般化学習を進めていきましょう!

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿