9割の人が間違えている!?犬のしつけに主従関係はいらない
先日、「たまペット」というマルシェのイベントに、JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の一員としてお手伝いさせて頂きました。
その時に、イベントの一環として、イベントに来場している飼い主のみなさんに
『しつけに関するクイズ』を実施させて頂いたところ、かなり大きな反響をいただけたので、そのクイズを記事にしてみました!
問題は以下の5問で○×の二択問題です!
あなたは何問正解出ますか?
Q1.犬をしつけるには、飼い主が上位に立たなければならない
Q2.犬をしつける時は、褒めてご褒美をあげる方が効率が良い
Q3.ご飯を食べる時は、犬より先に人間が食べなければならない
Q4.引張りっこで犬と遊ぶ時は負けてはいけない
Q5.犬を叱るときは、マズルを持ってダメといって叱る
実は、この中のある問題は会場で9割の方が不正解だった問題です。
以下、それぞれの問題の解説と正解発表をしていきます!
(タイトルである程度わかってしまうかもしれませんが…)自分の答えを横に控えて、正誤確認してみてくださいね!
クイズの正解発表の前に
クイズの正解発表の前に、前提として持って頂きたい知識について整理したいと思います。
確かに大昔は犬をしつけるには、
「上下関係をはっきりさせて服従関係を作るべき!」
「犬に服従させることが重要!」
だと叫ばれていました。
実はこの考え方は、「犬の祖先はオオカミである」という説がベースになっているのです。
元来、人間は犬の祖先であるオオカミを統率して一緒に暮らしてきました。
その統率の際に、オオカミの群れの習性的に人間がリーダーである必要があったのです。
つまり、オオカミに対して、オオカミの群れの『一番偉いやつ』として人間を認識させる必要があり、そのための主従関係が必要でした。
その理論を、
「犬の祖先はオオカミだから!」
という理由だけで、犬にもスライドして「人がリーダーにならなくてはいけない」と大昔は考えられていました。
しかしながら、最近の研究では、
・野生のオオカミの群れでは、リーダーそのものが常に変わること
・長い歴史の中で家畜化されてきた現代の犬と家畜化されなかったオオカミを同じように考え当てはめること
などなど、その説自体が疑問視されています。
まぁ当たり前といえば当たり前ですよね…
原始人と現代人が全く違った生活を必要とする様に、犬とオオカミも全く違った生き方を必要としているということです
クイズの正解発表
Q1.犬をしつけるには、飼い主が上位に立たなければならない
最新の科学的研究などで、犬の習性を理解し、犬の福祉を重視したトレーニングを行っているドッグトレーナーたちの世界では既に当たり前になってきている事実なのですが、こんなに重要なことを、世の中一般のほとんどの方たちに届けられていないことがショックでした。
未だにテレビなどでも
「犬には上下関係が必要!」
「飼い犬に対してリーダーであることを見せつけなければならない!」
など謳っている番組があるのはかなしいですね…
上記でも述べた様に、
「犬をしつけるには、飼い主が上位に立たなければならない」
というのは誤りです。
したがって、クイズ①の答えは”×”です!
Q2.犬をしつける時は、褒めてご褒美をあげる方が効率が良い
犬を抑制し、制圧するしつけ方法では、犬が委縮してしまい抵抗しなくなり意欲的に動くことを止めてしまいます。
犬のことは褒めてしつけ、ご褒美を使いましょう。
ここで言うご褒美とは、食べ物だけではありません。
遊びも抱っこもご褒美に為り得ます。
(「ご褒美について詳しく知りたい!」
という方は、以前執筆した記事がありますのでそちらも見てみてください!)
飼い主さんが望む行動を犬が取ってくれた時に、褒めてご褒美を与える方が、犬にとっても幸せで効率的なしつけになります。
したがって、クイズ②の答えは”〇”になります!
Q3.ご飯を食べる時は、犬より先に人間が食べなければならない
クイズ③も、オオカミと犬の行動が違うということが現代は解明されているので、食事の順位についても人と犬の関係には影響が及ぶことはありません。
したがってクイズ③の答えは”×”です。
そもそも、当たり前ですが人間と犬が一緒にご飯を食べなくても大丈夫です。
Q4.引張りっこで犬と遊ぶ時は負けてはいけない
「引っ張り合いっこで勝たせると(調子に乗って)暴れやすくなる」
という類のことが広く言われていたりしますが、近年の研究では
「引張りっこで犬に勝たせても、攻撃性は増さなかった」
ということがわかっていて、実際には、
飼い主におもちゃを動かして引張りっこをしてもらった方が犬が学ぶということもわかっています。
つまり、引張りっこで犬と遊ぶ時、負けてあげても全然構わないのです!
勝ち負けよりも、『犬が何回も遊びたくなる様に遊んであげる』ことが大切です!
したがってクイズ④の答えは”×”です!
Q5.犬を叱るときは、マズルを持って「ダメ!」といって叱る
このクイズも正答率が低かったです。
犬を飼う時などに、実際にこの様にしつけるようアドバイスを受けた方が多いのかもしれませんね。
散歩の時などに、飼い主関係なく
「親犬が子犬のマズルを押さえ込んで動きを抑える」
ということはよくあることですが、それを真似て飼い主がマズルを引っ張って犬の行動を制御するのは適切ではありません。
もし、犬が嫌がることをしつけなければいけない時… 例えば、
・首輪をつける時
・涙やけを拭く時
・歯磨き時
などなどは、オヤツやフードなどを使って、良い経験と結びつくように工夫して学習をさせましょう。
マズルを持って力で制しては、犬はあなたの手を信頼しなくなってしまいます。
したがってクイズ⑤の答えは”×”です!
終わりに
いかがでしたでしょうか?
冒頭にも書きましたが、クイズ①は9割くらいの方が不正解だったのはかなり驚きでしたし、より広めていかなければならない知識だと改めて感じました。
今回は少しでも楽しみやすい様にしてみたので、
「面白かった!」
「意外とためになった!」
と思っていただけたら、ぜひお友達にも広げてもらって、犬に関する正しい知識をシェアしていただければ幸いです!
また、このクイズがみなさんの楽しい会話の話題づくりになれば光栄です!
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿