どうすれば犬はしつけを覚えてくれる?絶対知っておくべき3つの学習法!
皆さんは犬がどのように行動を覚え、学習していくのかご存知でしょうか?
「しつけをしたのに、愛犬がいうことを聞いてくれない!」
という方の中には、『具体的なしつけのやり方』ばかりを気にして、こうした『しつけの基本の考え方』を知らないままの方もいます。
そうした場合、この『しつけの基本の考え方』をマスターできると、愛犬がいうことを聞いてくれる様になることも多いのです!!!
今回は、「どの様にしつけを行えば、犬は正しく学習してくれるか?」というテーマに対して、しつけの3つの基本方法というところに焦点を当てて、解説していきたいと思います!!!
基本のしつけ3種類
今回の記事では、しつけの3つの基本の考え方として、
・オペラント条件付け
・古典的条件付け
・馴化
について解説していきたいと思います。
『オペラント条件付け』
犬のしつけ方法に興味のある方や、実際に行なっている方の中には、
「犬が望ましい行動をした直後に褒める、ご褒美を与える」
ということがしつけだと知っている方もいると思います。
オスワリの例で例えると、
「オスワリ!」と言う
↓
犬がお尻を床に付ける
↓
「イイコ!」と褒めてご褒美を与える
といった図式です。
この様な、学習の仕方をオペラント条件付けと呼びます。
犬の行動に対して評価する方法です。
オペラント条件付けでは、
「ある刺激を受けて、ある行動を取ると、その直後にその個体がメリットと感じる良い事が起こる」
と繰り返し学習させることで、その行動の頻度を上げていきます。
例えば、下の図は“遊び”におけるオペラント条件付けです。
他にも、
縄張り意識から、宅配便の人に対して家の中から吠えまくる
↓
宅配便の配達員の方が去る
この場合、配達員の方が犬の吠えた声が原因で立ち去ろうと、そうでなかろうと犬にとっては、
「吠える=配達員が帰る」
と学習されるわけで、これもオペラント条件付けです。
そしてそれが繰り返されれば繰り返されるほど強固な行動に変わっていきます。
また、上記の様に
「ある行動を起こした時に、メリットを与えることで、その行動を自発的に起こす様にしつけていく」というのもオペラント条件付けですが、その逆に、犬の望ましくない行動を減らす手段として、
「ある行動を起こした時に、メリットを<u>与えない</u>ことで、その行動を自発的に起こさない様にしつけていく」場合も、オペラント条件付けの一つです。
例えば、
犬を撫でる
↓
犬が盛り上がって、飛びついてきた、
↓
触るのを止めて背中を向ける
その犬にとって触られることが好きだった場合、飛び付いた結果、報酬がなくなってしまうので、
「触られて飛びつく=触られるのをやめられてしまう」
というふうに学習して、今後飛び付くという行動が減少していくことが予想されます。
いずれについても、
「犬の行動に対して、評価が起きる」というのがこのオペラント条件付けです。
『古典的条件付け』
もう一つの学習の大きな柱は、古典的条件付けと呼ばれるものです。
いわゆる『パブロフの犬』と言われる条件付けのことで、パブロフ型条件付けとも言われます。
「ベルの音を聞かせた直後に、犬にフードを与える」
という実験を繰り返したところ、
「ベルの音を聞いただけで犬はヨダレを垂らすようになる」
という理論ですね!!!
この、『古典的条件付け』が、前の『オペラント条件付け』と大きく違うところは、犬の行動を評価している訳ではないということなんです。
つまり、犬がどんな行動を取っていても、無条件に結果が付いてくる学習のことを言います。
犬がオスワリしていようが、
犬が飛び付いていようが、
伏せていようが…
とにかく、どんな状態にあったとしても、ある刺激が知覚されたら、その直後に必ず報酬に結びつく何か起こるようにして、学習させていく方法のことを『古典的条件付け』と言います。
要は、「反射的に○○させる」という状態を学習させることです!
『古典的条件付け』を、人の場合で例えるなら…
「梅干しを食べる」
↓
梅干しは必ず酸っぱい
↓
唾液が出る
ということを、繰り返していくと、食べる前に「梅干を見る」ということをするので、この「梅干を見る」段階で唾液が反射的に出てしまうようになるんですね。
人によると、目の前に梅干すらないのに、想像しただけで唾液が反射的にでる人もいますよね!
犬の場合も、ほとんど人間と同様です。
例えば…
ご飯がしまってある棚を開ける
↓
棚を開けるとき、大きめの音がする
↓
ご飯をあげる
という流れで、犬にご飯を繰り返しあげていると、犬にとっては
「棚の開く音がすると、ご飯がもらえる!!!」
と学習するとようになり、棚が開くだけでご飯皿の前で待機したり、よだれを垂らしたりするようになるというわけです。
冷蔵庫を開ける音がすると駆け寄ってきたり、お菓子の袋の「バリバリ」「ぺりぺり」っという様な開く音を聞くとすり寄ってくるのは、こうした『古典的条件付け』の賜物なのです。
ご飯を入れてある棚を開ける音がすると、犬が飛んでくるとか、冷蔵庫を開ける音がすると犬が飛んでくるとか、そういった経験はありませんか?
またお菓子の袋のような「ペリペリ」「パリパリ」といった音がすると寝ていたはずの犬が起きてきて傍にいるとか、ありませんか?
その音の直後に、良い経験を積んできたゆえの学習なのです。
また、『オペラント条件付け』と同様に、この『古典的条件付け』にも、ハッピーな気持ちの学習だけじゃなく、逆のアンハッピーな気持ちの学習もあります。
例えば…
他の犬が苦手な犬が、
散歩中に犬に出会う度に、避けようとして吠える
↓
「吠えちゃダメ!」と飼い主から怒られる
↓
恐怖心から吠えているのに、怒られて、リードで引っ張られるなど、不快な経験をする
こうした経験を繰り返せば、「他の犬にあったら、怖い上にリード引っ張られて嫌な思いをする」と反射的に他の犬を避けるようになってしまいます。
これが深刻化すると、散歩自体嫌いになってしまって、家で散歩用のリードが準備されるさ音がした瞬間、嫌な気持ちをしてしまうという、悪循環に陥ってしまうこともあります。
この様に、『古典的条件付け』も、『オペラント条件づけ』と同じ様に、犬のしつけ方に大きく関わっているのです。無意識に行動を学習する分、オペラント条件付けよりも注意を払うべき学習方法かもしれませんね。
ただ、私がドックトレーナをしていて、とても感じることなのですが。
この『古典的条件付け』を意識している人が、あまりに少ない!!
無意識を意識するということはとても難しいことなのですが、
「こういう反応を繰り返すと、こういう風に学習する(しちゃう)かな?」
と想像しながら愛犬と接して会えることが大切です。
こうしたことを意識しながら、
この「古典的条件付け」、犬の情緒面に働きかけるのにとても重要な役割を果たします。
例えば、ブラシを苦手にしているコには
ブラシを見せてオヤツ
ブラシを嗅いだらオヤツ
ブラシを見たらオヤツ
ブラシに近づいたらオヤツ
ブラシの背が触れたらオヤツ
ブラシの背が一撫でしたらオヤツ
ブラシが一撫でしたらオヤツ・・・・
のように順を追って欲張らずに犬にとって良い物だと無条件に提示していくと、ブラシが苦手なモノではなく、好ましい物に変化していきます。
個性を大事にして、愛犬が反応しない程度の小さな刺激から学習し始めていきましょう!
『馴化』
そして最後の1つが「馴化(馴致)」です。
これはいつの間にか、犬が音などに自然に慣れていくことです。
家の近くで解体工事などがあって最初は吠えたり反応していた犬が、いつの間にか慣れて吠えなくなって気にしなくなっている状態などを指します。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、犬のしつけの3つの基本方法について解説しました。
『オペラント条件付け』
『古典的条件付け』
『馴化』
それぞれ、文章で書いて見ても
「なんとなくわかるかなぁ…」
とちょっと理解できるくらいで、完璧に理解をするのは難しいことだと思います。
そうした時は1人で抱え込まないでください!
ドッグトレーナーなど、犬の専門家があなたの力になります。
専門知識を持ったドッグトレーナーは、犬だけではなく飼い主さん自身がこの先、自分で自分の犬のしつける応用力、対処する力を伸ばしてくれるはずです。
話は逸れましたが、今回お話しした『3つの基本方法』をマスターして、愛犬とより良い関係を築いていってください!
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿