それは生まれつきのせい?あなたの犬にしつけが聞かない理由

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犬を飼っている人なら誰しも、一度くらいしつけが上手くいかなくて悩んだことや、いうことを聞いてくれなくて落ち込んだ経験があると思います。

(かく言う私も、『ドッグトレーナー』といういわゆる『犬のトレーニングのプロ』をしていますが、犬のしつけには大変苦労しています…)

 

きちんとしつけたつもりで、いざ合図をしても、いうことを聞いてくれなかったりすると、落ち込んで、

「自分の育て方が失敗だったのかな…」とか

「甘やかしてしまったから、こんなにダメな犬になってしまったのか」

「あのしつけ方で本当に正しかったのだろうか…」

などなど、愛犬がいうことを聞いてくれなかった原因を自分のしつけの悪さだと思い込んで、自分を責めて悩んでしまう方がとても多いです。

 

そんなことが重なると、『育犬ノイローゼ』のような、一種愛犬を育てることに対するうつ病のような精神状態に陥ってしまう方もいます…

 

ただ、上記のような、

「ちゃんとしつけたつもりなのに、愛犬がいうことを聞いてくれない!」や

「なぜか問題行動が一向に止まない…」

というのは、

実は、あなたにだけ原因があるわけではありません

 

では、愛犬が問題行動をやめるようにならない原因はどこにあるんでしょうか?

今回は、「犬が飼い主のもとに来るまで」の過程に焦点を当てて、その原因について解説していきます。

 

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もちろん、犬の性格と、犬が行動を決める基準は、「生まれ持った気質」と「これまでに経験した学習」の割合によるので、手元に迎えてからの飼育環境も大きな要因の一つです。

 

犬のしつけ方のサポートをしていくのが、ドッグトレーナーの私の仕事ですから、レッスンで「これまでに経験して学習した望ましくない犬の行動」を「新たな望ましい犬の行動」に塗り替えていけるようアドバイスして練習をしていきます。

 

けれども、問題行動と捉えられる犬の行動の要因は、それだけなのでしょうか?

本当に、原因は飼い主さんだけにあるのでしょうか?

 

実はそうではありません!

 

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犬の性格と行動を決定する要因

 

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人間や他の生物もそうですが、犬の”性格”と”行動”を決定する要因は、

『生まれ持った気質(先天的要因)』と『これまでに経験した学習(後天的要因)』

の割合によります。

 

なので、「正しいしつけを行う」というのは後天的な部分に関してとても重要な事項ですよね。

しかし、いくらしつけを頑張っても、『生まれ持った気質』は変えることができません。

 

例えば、

・両親犬の気質などの遺伝的な要因

・神経系の機能的な障害

・犬種による行動特性の違い

 

などは先天的なものなので、飼い主さんの手元に来てから発生した問題ではないし、しつけでどうこうできる問題でもありません。

 

 

また、『これまでに経験した学習(後天的要因)』に関しても、

「愛犬をお家に迎え入れた後の学習(自分がしたしつけ等)」と「愛犬が家に来るまでにした学習(生後〜家に来るまで)」がありますよね。

 

そして、とりわけ、「愛犬が家に来るまでにした学習」の中でも、

『望ましくない犬の行動の学習」については、飼い主さんだけの責任とは言えない要因が実はあるのです。

(『望ましくない犬の行動』に関して、詳しくは<a href=???>こちら</a>を参照ください!)

 

家に来るまでに学習してしまった、望ましくない行動

 愛犬が家に来るまでに経験してしまいがちな、望ましくない行動の原因には以下のようなものが挙げられます。

もし、それらに関連するような問題行動を今、あなたの愛犬が患っているなら、あまり自分のしつけだけを責めすぎないで、昔の経験まで遡った対処をして挙げてください。

 

 

①愛犬が胎児の時の、母親の精神状態

実は、愛犬の母親が妊娠中にストレスフルな生活をしていると、その影響は胎内の子犬にも出ることが研究から明らかになっているんです。

その影響で、子犬には

・学習能力の低下

・刺激に対する過敏性の発現

・情動的に不安定になる

などといった問題行動が出てしまうことがあります。

 

②愛犬が子犬の時、母親に世話をされない

子犬が産まれた後、母犬が子犬の世話をあまりしなかった場合、成長した子もまた、あまり子犬の世話をしない母犬となります。遺伝的な要因だけではないのです。

 

③”移行期”の飼育環境と、”社会期”の経験

“移行期”と呼ばれる犬の生後14~21日前後の飼育環境と、

“社会化期”と呼ばれる、生後3週(21日)~12週齢の経験は、どちらも子犬の今後の成長基盤に大きく影響を与えます。

 

 

<”移行期”の飼育環境に関して>

例えば、犬は本来の習性として、寝床を汚すことを嫌うことが多いです。

しかし、”移行期”から長い間、寝床とトイレを分けずに狭いケージ内でペットシーツしか置けないような環境で育ってしまった場合、食糞の癖が付いたり、排泄物の上で寝ることに慣れてしまったりします。

 

これではトイレもハウスも検討つくはずもありませんね。

トイレ・ハウスがイマイチ上手くいかないという方は、こうしたバックグラウンドがないかどうかも視野に入れながら、しつけを見直してみてください。

 

 

<”社会期”の経験に関して>

「三つ子の魂百まで」と人間の諺にもあるように、犬も小さい頃、とりわけ”社会期”に学習したことは、その後生涯、学習基盤となります。

その時期に、母子分離・兄弟分離を早計にしてしまうと、子犬の精神面に大きな影響を与えます。

 

 

例えば、その様な”社会期”のショッキングな経験の結果として、

・不安要素の発現

・怖がりの傾向が強い成犬になる

・特定のことに対するトラウマ

などの影響が強く残ってしまったり…

 

また、この”社会期”前半には、犬同士のコミュニケーション方法であるボディランゲージの取り方を母親が子犬に教育し始めます。

 

この時期にすでに、母子分離をしてしまっていると、子犬はコミュニケーションの取り方を理解しないまま大人になってしまうので、無駄吠えや散歩・ドッグランでのトラブルに繋がりやすくなってしまいます。

 

この様に、母親の胎内にいる時〜幼少時の教育は犬の基盤となる部分を作っていくものですので、そうした部分に問題がある場合、ひとえに

「飼い主のしつけが悪いから、問題行動が減らない!!!」

というのは間違っています。

 

こうした、「愛犬のバックグラウンドにはないがあるのか」をきちんと理解して挙げた上で、お互いが過ごしやすくなる環境作りに向かっていきましょう!!

 

終わりに

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いかがでしょうか?

今までは、「しつけの方法」など、犬を家に迎えてからのトレーニングについての記事が多かったですが、飼い主さんの手元に渡るまでの子犬の過ごし方も、その後の犬の成長過程に大きな影響を与えているということが、わかったと思います!

 

「愛犬を家に迎えてからのしつけが全てではない」

このことはある種真実で、しつけに悩んでいる飼い主さんにとっては非常に救いになる言葉だと思います。

 

しかし、これだけで終わらせてはいけませんよね!

ドッグトレーナーはもちろん、飼い主さんも、犬のしつけ方がうまくいかない時、今回紹介した様な、犬のバックグラウンドまで考慮した上で、個々にあったペースで慎重にトレーニングを進めていくことが大切です。

 

人と犬、お互いが気持ち良く共存出来るために、やって欲しくない行動の代わりに、どんな行動を取って欲しいのか、犬に根気よく教えましょう!

レーニングは、必ず飼い主と犬の絆を強めてくれます。

 

 

また、今回の記事の内容は、JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)という団体の第12回JAPDTカンファレンスで聴講した内容を噛み砕いてお話ししたものです。

「もっと犬のことを知りたい!!」

とご興味のある方は、ぜひそうしたペットイベント等にも参加してみてください!

知見がさらに深まると思います。