【体験談】散歩中、不安や恐怖から、他の犬に吠えてしまう愛犬を叱るのは正しいのか?

【体験談】散歩中、不安や恐怖から、他の犬に吠えてしまう愛犬を叱るのは正しいのか? 

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「散歩中、不安や恐怖から、他の犬に吠えてしまう愛犬を叱るのは正しいのか?」

 

この問いに対する答え、正直私にはわかりません。

正しいのかどうか、それは正直わかりません。

なぜかと言うと、実際、犬にインタビューして気持ちを聞けるワケではないからです。

 

なので、ここからは私が犯した愛犬「空(そら)」への失敗、「空」と経験してきたこと、それから悪戦苦闘して今、苦痛や不安を感じずに楽しく散歩が出来るようまでに至った実体験をお話しさせていただこうと思います。
かなり長い文章となっていますが、よろしければお付き合いください。

 

 

私の体験談

愛犬の『空』

 

私は、ずっと憧れていたゴールデンレトリーバーの子犬を、犬舎から家族として迎え入れました。

 

ゴールデンレトリーバーと言えば、

「人も犬も大好きで、いつも尻尾フリフリ、愛想が良い食いしん坊」

といったイメージを持つかもしれません。

 

『空』と名付けた、この我が家のゴールデンレトリーバーも、

マイペースではありましたが、まさにそのイメージ通りの犬で、人に対しても犬に対しても友好的な可愛らしいコでした。

 

ちょうど、『空』を家族として迎え入れた頃、私は犬の訓練所に勤務していました。

そのため、子犬だった『空』の社会化(他犬や他人に馴らしたりする)には、絶好の環境にありました。

 

当時、『空』にの社会化も1歳くらいまで順調で、他のどんな犬とも仲良く遊べるようになっていました。

 

しかし、私の失敗はこの後に始まります。

 

叱責

「もう犬には慣れたから大丈夫だろう」

と高をくくり、忙しさにかまけて、

『空』と、他の犬との接触極端に断ち切ってしまいました。

こうした状況が1年ほど続いた後、事件が起きてしまいます。

 

『空』が2歳を過ぎたある日の散歩中、同じオスの同年代の犬と出くわしました。

犬同士、目が合った瞬間からお互い目線をロックオンしていることがわかったのに、2頭を安易な気持ちで接触させてしまいました。

 

そして2頭はケンカをしました。

ここまではまだマシだったのです。

 

ここからが私の犯した大きな過ちです。

 

当時の私は、今とは違い、

「飼い主は犬をどんな時も従わせるべき」

と思い込んでいました。

 

「犬の悪い行動は力で抑え込んで止めさせる」

と思い込んでいた私は、ケンカした『空』のことをひどく叱りつけました。

 

『空』を家に迎えてから、最も怒りを爆発させたしまった瞬間だったかもしれません。

 

しかし、この叱責が、

『空』を変えてしまった瞬間だったと、今では思っています。

 

翌日から、散歩中に出会う他の犬に対して、『空』は、唸るようになりました。

唸ると同時に、鼻に皺も寄せて歯茎も見せるようになり、攻撃的になってしまいました。

 

1歳まで、他犬と遊べるほど、順調に社会化をし、他犬と遊べていた『空』が、1日にして変わってしまいました。

私が『空』を変えてしまったと言うべきかもしれません。

 

「犬を力で従わせるべき」

と思い込んでいた当時の私は、酷いことに、さらに過ちを重ねてしまいます。

 

「威嚇」の理由

今思うと深い反省の念しかありません。なぜあんな愚かな行為をしてしまったのか。

他犬に対し、唸り威嚇する『空」のことを、

「イケナイ!」

と叱ってやめさせようと必死になっていました。

 

他犬に対する「不安」や「恐怖」を植え付けてしまったのは私なのに、唸りや威嚇などの悪い行動の原因が『空』の中にあると決めつけていました。

リードと首輪を使って半ば『空』を吊り上げに近い状態で、唸ったり威嚇したりする度に叱り続けました。

 

本当に愚かな行為でした。

 

『空』があの様に威嚇したのも当然の行為だったのだろう、と今ではよくわかります。

他の犬とケンカした後に、

私にひどく叱られ怒りを爆発され、

他犬に対してたっぷりと嫌な印象を植え付けられたワケです。

 

当然そこから他犬を避けようとするのは必然でしょう。

 

他犬に対する「不安」や「恐怖」から、それを避けようとして出している唸りや威嚇などのボディランゲージだったのに、私はそれを無視しました。

 

『空』から発せられる言葉や感情を無視するどころか、その不安や恐怖に対して、力で制しようとしていました。

不安や恐怖を助長させるような行為をしていました。

情けない話です。

 

当然、唸りや威嚇が治るはずもなく、状況はさらに悪化していきました。

以前は10m近くに来るまでは症状は出なかったものが、唸り始める距離がどんどん遠くなり、20m、30m先に他犬を見つけただけで唸るようになりました。

 

『空』の立場に立って見れば簡単なことです。

ケンカを機に大嫌いな存在になった他犬に会う度に、私にリードで半ば吊られ、

「イケナイ!」

と叱られるのです。

 

他犬をより一層嫌いになっても当然ですし、より早い段階からそれを遠ざけたいと思うのは自然なことです。

 

 

本当にかわいそうなことをしました。

『空』には謝っても謝りきれません。

この、唸りや威嚇行動が続く限り、『空」にとってはもちろん、私にとっても散歩は憂鬱なものでした。

 

前から犬が歩いて来れば、私は緊張し、叱る準備をし、『空』も緊張状態に入りました。

こんなお散歩、お互いにとって楽しいはずがありません。

 

 

方向転換

問題行動が全く減っておらず、むしろ状況が悪化していることに気付いた私は、

「このままではいけない」

と、180度方向転換をしました。

 

『空』を飼った当初から、様々な分野の勉強をしてきたので

「問題行動の修正のやり方は一つではなく、今までの方法が『空』には合っていなかった」ということに気づくことが出来ました。

 

今の私であれば、犬の情緒面を変えていくには、オペラント条件付けだけではうまくいかないことがわかります。

 

『空」は、他犬への不安な気持ちから、唸りや威嚇を出しているワケです。

オペラント条件付け[1]固執して、

「唸りや威嚇を止めたら「イイコ」と褒めてご褒美を与える」

ことをしても、時すでに遅しなんです。

 

他犬に会っただけで半分溺れているようなパニック状態に陥っているのです。

溺れている犬に対して「イイコにしなさい!」と言ったって聞こえるはずもありません。

 

さらに自分の取っている行動とは関係なく他犬の姿が消えたらママの機嫌が戻るという経験を繰り返しているわけですから、他犬がいるとママの機嫌は悪く、他犬がいないとママの機嫌は良くなると学習するかもしれません。

 

私がここから方向転換して『空』のために始めたことは、

「『空』が他犬を見つけたり、意識しただけで、美味しいモノを口に放り込む」

ということでした。

 

『空」が唸ったり威嚇を始めたりする前がベストです。

ただ『空』が、他犬を意識しただけで、無条件に特別美味しいモノが毎回『空」の口に届けられます。

 

他犬との距離が近過ぎれば、既にパニックになってしまうので、当然食べられ状態ではありません。

 

なので、『空』が安全だと感じ、安心できる距離での練習をひたすら繰り返しました。

万が一距離が近くなり過ぎて、唸ったり威嚇しても決して叱りません。

 

無条件に美味しいモノを口に届けるだけです。

 

これは、『空』の取っている行動に対する報酬ではないので、『空』がどんな行動を取っていようが、何もしていなくても、

「他犬の出現=美味しいモノが提供される」

という学習の仕組みです。

 

皆さんも知っているかもしれませんが、有名な『パブロフの犬』と同じ原理です。

人間で言えば、「梅干し=無条件に酸っぱい」を繰り返し経験したことで「梅干しを見ただけで唾液が出る」のと同じ状態です。

 

ここで気を付けなければならないのは、「空」が安全と安心を感じていられる距離であるということです。

日々コツコツとこの練習を繰り返して改善してきていても、他犬との距離が近過ぎて不安や恐怖を感じ、吠え掛かり合いになれば、情緒面でも行動面でも逆行してしまいかねないからです。

 

その後

毎日の散歩で、私はひたすら練習しました。

必ずトリーツポーチを持って散歩に出かけ、他犬と近くなり過ぎないように気を付け、他犬に会ったら緊張せずに楽しい雰囲気を出し、美味しいモノを『空」の口に放り込み続けました。

 

私はプロのトレーナーです。

自分で言うのも何ですが(笑)、この私のタイミングをもってしても、憂鬱だった『空』との散歩が、楽しい散歩になるまでに半年以上かかりました。

 

半年以上掛かって、他犬の存在を見つけると『空」が

「ルンルン♪」

と私を見上げるようになりました。

 

とっても嬉しい変化でした。

 

このトレーニングを何年も続けても、今でも相性の悪い犬はいます。

お互いそれがわかっているので、無理に犬を近づけて我慢させるのではなく、飼い主同士遠方から会釈し、犬を近づけないように毎回去ります。

 

一定の距離が必要とはいえ、長い年月を懸けここまで改善し、『空』も私も散歩を楽しめるようになったのは、本当に喜ばしく嬉しい事です。

 

終わりに

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『空』に対するあの時の自分の過ちに気づき、修正できたこと、

本当に良かったと思っています。

 

そして自分が経験したからこそ、不安や恐怖から吠え掛かっている犬を叱ることは逆効果なのではないか?ということを皆様に伝えたいと思って、今回の記事を書かせていただきました。

 

犬との散歩中、吠え掛かる犬を「ダメ!」と叱っている飼い主さんをたくさん見ます。

 

小さい子供に対する恐怖から震えながら唸っている犬に対して「ダメでしょ!」と叱っている飼い主さんをたくさんみます。

 

何の気なしに普段犬を叱っていることが、犬の情緒面にどのような影響を与えるのか。

その積み重ねが、犬の情緒面をどう変えていくのか。

今一度、考えてみましょう。

 

そしてその吠えの原因が何なのか、不安や恐怖によるものから来ているのか、追求して行きましょう。

 

吠えの原因が犬の中だけにあると思い込まずに、

その原因を避けられるように手助けしてあげたり、取り除いてあげることで改善するかもしれない、ということを皆さんにお伝えできたかなと思います。

 

私がしてしまった事と同じ過ちを、飼い主さんたちにはして欲しくはありません。

初めて犬を飼う時に、ワクワクした楽しかった気持ちを思い出してください。

愛犬と一緒に楽しくお散歩する姿を思い描いていたはずです。

 

もしそういう方たちが、現状犬を叱るばかりの散歩になってしまっていて憂鬱な気分を抱えているとしたら、悲しい事です。

 

それが散歩コースを変えたり、毎日の練習を積み重ねることによって変えられることを知って欲しい。

 

犬も人も楽しい気持ちで散歩出来なくては、お互いが辛いのではないでしょうか?

お互い、楽しい気持ちの散歩の方がいいに決まっています。

 

散歩中に、不安や恐怖から他犬に吠え掛かってしまう犬を、叱ってやめさせようとすることは果たして正しいのでしょうか?

 

もう一度皆さんの心の中で考えてもらえたら、と思います。

 

[1] ワンちゃんが自ら行動した時に「ご褒美」や「罰」を与えることで、その行動を強化させたり弱化させるしつけ方法

 

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

寝てる時に撫でるのは逆効果?睡眠時に犬が撫でられると怒る理由

寝てる時に撫でるのは逆効果?睡眠時に犬が撫でられると怒る理由

~子犬の時は大丈夫だったのに、成犬になるとなぜ撫でると噛むようになるのか~

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犬が寝ている姿、可愛くて本当に愛おしくなりますよね!!!

フワフワのモフモフで柔らかくて、静かに寝息を立てている姿は、まるで天使です。

 

特に、子犬を迎え入れて、眠っている姿を見た時などは、たまらなく可愛くてついつい撫でたくなると思います。

ペットショップでこの可愛さを目の当たりにして、犬を迎え入れることに決めた方も多いかもしれません!

 

しかし、そんな可愛い犬の寝ている姿ですが…

可愛いからといって、やたらめったらに触っていると犬と飼い主の関係を悪化させる原因になりかねないんです。

 

さらに実は、多くの飼い主さんが経験する

「ソファで寝てしまってハウスに動かそうとしたら、噛まれた」

「寝ているとこを移動させようとしたら、いきなり吠えられた!」

などのトラブルも、この『寝ている間に触る』問題が大きく関わってきます!!

 

今回は、そんな『犬が寝ている間に触ってしまうことによって発生する問題』について解説していきたいと思います。

 

犬にとって『睡眠』とは? 

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ではまず最初に、そもそも犬にとって『眠る』という行為はどんな意味を持つのか考えてみましょう。

 

『眠る』とは、動物にとって個体を維持するための『休息行動』です。

 

言い換えれば「生命を維持するために、肉体的なエネルギー消費を抑え、その回復を目指す行動」です。

これは人間も同じですね。眠らなければ動物は死んでしまいます。

 

これを踏まえると、「寝ている犬に触る」ということは、本質的には「生命活動を阻害する」ということに他ならないんですね。

 

大袈裟といえば大袈裟かもしれません。

でも、よく考えてみれば寝ている時に誰かに触られて起こされたら誰だって嫌な気分になりますよね。

 

ただただ犬の寝顔が可愛くて、愛情表現として撫でているつもりでもそれは愛犬との仲を悪くしている原因かもしれませんので、過剰に睡眠時に撫でることは良いことではなさそうです。

 

もちろん、個体差があって、寝ている間に撫でられても全く平気な犬や、それどころか触っている相手が飼い主であることを目で見て確認して、さらに安心して再び眠りにつく犬もいます。

 

こうした反応は、その子の持っている気質や性格に大きく依存する個体差なので、上記の『睡眠の本質』を踏まえた上で、

「自分の愛犬はどういうタイプなのか?」

ということを見極めるのが大切です!

 

 

成長するにつれて、撫でたら攻撃されるようになる理由

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では、睡眠の働きについて学んだところで、ここからは具体的な問題例について考えていきたいと思います。

ここでは、多くの飼い主さんが悩んでいる、

「子犬の頃は眠っている犬に触っても大丈夫だったのに、成長するにつれて噛んだり威嚇したりするようになる

のがなぜなのか、ということをお話ししていきたいと思います!!!

 

 

成長による『好奇心』と『警戒心』のバランス変化

上記のような、成長による反応の変化は、『好奇心』と『警戒心』のバランスの変化によるところが大きいということがわかっています。

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(参照: http://tomo-iki.jp/socialization)

 

上記のグラフは、犬が成長を『好奇心』・『警戒心』の度合いの変化を表したものです。

 

初めて犬を迎え入れる時、子犬の週齢は生後16週齢未満のことが多いのですが、その時期の子犬たちには、まだまだ警戒心が芽生えておらず、一番好奇心旺盛な時期なんです。

 

だからこそ、眠っている時に不意打ちで触っても、それを危険として察知しないため触っても怒らなかったり、攻撃を起こしたりしようとはしないんです。

 

一方で、13週を超えてくると好奇心が著しく低下して、代わりに警戒心が発達して来ます。

 

これは動物としては当たり前のことで、いつまでも警戒心がなく好奇心ばかり旺盛であったら、すぐに他の動物に狙われたり、事故に遭ったりして種の保存が難しくなるからなんです。犬の生命個体維持のために、備わった心の成長の仕組みなんですね。

 

そのため、警戒心の高い犬に対して、眠っている時に触ると、触られたことを「攻撃された!」と勘違いしたり、「身の危険だ!」と捉えてしまい、自分を守る方法として、威嚇したり噛もうとしたりするようになるというわけなんです。

 

学習によるもの

さらに、飼い主が「寝ている犬を触る→吠えられる・噛まれる」ということを、(ある種性懲りなく)普段から繰り返していると…

 

 

触られたことで、睡眠を邪魔される
本能的に威嚇・攻撃する
ビックリした人間の手が引っ込む
睡眠を阻害してきたものは、威嚇や攻撃で追い払える

 

というふうに学習してしまい、その攻撃性が強固なものになっていきます。

 

 

以上が「子犬の頃は眠っている犬に触っても大丈夫だったのに、成長するにつれて噛んだり威嚇したりするようになる」理由です。

 

 

まとめ

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以上、『犬が寝ている間に触ってしまうことによって発生する問題』について、睡眠の本質という側面と、犬の成長による『警戒心』の変化や学習という側面から見てきました!

 

人間にとっては、

「前は平気だったのに…」

「寝ている犬を愛でたかったのに…」

と感傷的な気分になるかもしれません。

けれども、犬も悪気があるわけではなく、生きるために本能的な行動を取っているだけなのです。

 

一方で、犬は眠るときに「ジャマはされたくないけど人の傍や近くに居たい」とも思っています。

 

なので、人の近くではあるけれども、犬の睡眠の邪魔にならないような場所に寝床を設置してあげると良いと思います。

 

どんなに可愛くて、触りたくなっても、その結果、威嚇や攻撃性が出る犬の場合は眠っている時・眠い時にジャマをしないこと。

 

犬に悪気はありません。反射的に本能で取っている行動です。

 

この問題を抱えているお宅では、今よりさらに悪化しないように、「無理に触ろう!」なんて決して思わずに、眠っている犬は放っておいてあげましょう。お互いのストレスを減らし、安全に安心して暮らすために守って欲しいお約束事です。

 

 

お互いがストレスなく気持ちよく過ごせるように、犬の安心できる睡眠をデザインしてあげましょう!!!

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

そのしつけで大丈夫?愛犬が言うことを聞かなくなるしつけ方とは

そのしつけで大丈夫?愛犬が言うことを聞かなくなるしつけ方とは

 

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犬と一緒に生活していれば、やはり『しつけの悩み』は尽きないですよね…

 

毎日毎日同じことを注意していると、嫌気がさしてきたり、
そんなことが永遠に繰り返されていると、イライラが溜まってつい、愛犬に強く当たってしまうこともあるかもしれません。
また、

「犬には主従関係が必要だ!!」

などという、(前時代的で意味のない)情報を当てにしてしまい、何かと愛犬に対して不憫なしつけ方をしてしまっているかもしれません。

 

しかし、

 

・大声でどなりつける

体罰を与える(たたく・けるなど)

・引っ繰り返してお腹を押さえつけ、無抵抗を強制する

・降参するまでマズルをがっちり握る

・チョークチェーン・ピンチカラー・電気ショックカラーの使用

 

これらの罰を使って、問題行動を修正しようとすると、かえって問題行動が悪化する場合があります。

 

今回は、

「なぜそうした『罰を与えるしつけ』がいけないのか」

ということへの根本的な理由と、

「罰を与えてしつけがちな場面と、その対処法」

について解説していきたいと思います!

 

インターネットの古い情報や、テレビでの古い情報、非科学的な情報をそのまま受け入れるのはやめましょう。

 

 

『罰を与えるしつけ』がいけない理由

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そもそも『罰』は必要ない

まず、そもそものお話ですが、

「罰を与えて問題行動をやめさせる事」より

「なぜその問題行動が出ているのか?」

を考えることが、愛犬にしつけを覚えてもらう最初のステップです。

 

犬が問題行動を起こすのは、問題行動を取ることによって、何かしらのメリットがあるからです。何が犬にとってのメリット(環境であったり刺激であったり)になっているのかを考えてみて欲しいのです。

 

なので飼い主すべきことは、

「(罰などで強制的に)問題行動を安直にやめさせる」

のではなく、

「問題行動を起こしている『原因』を突き止め、環境を改善すること」です

 

例えば「トイレの失敗」でも、

『原因』が、『水の飲ませすぎ』なのか、『単にトイレの位置を把握していない』からなのか、などの違いで行うべき対処法も変わってきますよね。


であれば、クレートやサークルを使って、トイレが成功しやすい環境を用意するとか、家具を噛むのであれば、犬ではなく家具をパーテーションで囲むなど犬がそれをやらずに済む環境作りをして欲しいのです。

 

犬を撫でようとして手を伸ばすと威嚇してくるのであれば、無理に犬を撫でなければ良いし、撫でられることが犬にとって受け入れやすくなるように、罰ではなく報酬を使ってトレーニングすべきです。

 

フードを与える時に、人の手も一緒に噛んでしまうなら、当面は人の手からではなく、フードを床に投げて与えれば済む話です。

 

このように、まずは

「なぜその問題行動が出ているのか?」

「どうしたら、その問題行動が起こりにくくなる環境を作れるか?」

ということを飼い主さんが考えて見ましょう!

 

これを意識するだけでも、

「『罰を与えるしつけ』なんて必要ないじゃん」

と気付くはずです。

 

『罰』を与えることのデメリット

上記だけでも『罰を与えるしつけ』が必要ないことは理解していただけたかと思いますが、一応『罰』を与えることによるデメリットも、いくつか書いていきたいと思います!

 

 

1.攻撃行動の悪化

例えば、噛み癖のある犬に対して、罰を使って恐怖でその攻撃行動を抑えようとすると、「歯をむく」「唸る」などの警告なしに即座に激しく咬みつくように、症状が悪化する場合があります。

また、こうした抑圧に対して、犬が自分の身を守るため、突然爆発的な攻撃行動を起こすように悪化してしまう場合もあるので、十分注意が必要です。

 

2.過剰反応の助長

他の犬への吠え掛かりや、走る人や子供を追う行動を修正する際に、

「叩く」「蹴る」「チョークチェーンで絞め上げる」

などの罰を使い続ければ、余計にその対象物に対して嫌な印象が植えつけられ、より早い段階で対象物に対処しようと犬の本能が働くようになります。

その結果、かえって犬が過剰反応するようになったり、今までは大丈夫だった対象物にまで反応するようになる恐れがあります。

 

3.犬の身体への被害

チョークチェーンなどを使って犬の首を絞める罰を使っていると、

「皮膚や気管の傷害」「神経の傷害」「致死性の肺水腫」「緑内障の悪化」

などを招くことがあります。やめましょう。

 

 

 

仮に万が一、過剰な罰を与え続けて犬が大人しくなったとしても、これは「学習性無力感」と呼ばれる状態で、「何をやっても無駄、諦め、回避、逃避すらできなくなってしまった状態」に陥っている可能性が高いです。人で言う『鬱状態』にしてしまい、<u>犬の心をダメにしてしまっている最悪のケース</u>です。

 

それに、犬の学習の神経回路の割合は報酬系回路8:嫌悪系回路2です。

つまり犬は褒められることを好む動物なのです。褒めてしつける方が、圧倒的に学習が進むのです。

 

 

倫理的にも・効能的にも『罰を与えるしつけ』はいけないというわけです。

 

 

「罰を与えてしつけがちな場面と、その対処法」

それでは、実際に「罰を与えてしつけてしまいがちな場面」と「そうした問題行動への適切な対処法の例」について、いくつか確認していきましょう。

 

 

1.「家具を噛む」

家具を噛んでしまうなら、噛むためのおもちゃを犬のために何パターンか用意する。

クッションなどを噛みちぎってしまうなら、犬のおもちゃとして与えて良いモノを用意し、「狩り」に見立てた遊び方で、飼い主が犬と思いっきり遊んであげる。

 

2.「家の外の音に反応して、吠えてしまう」

家の外の音に反応して吠えてしまうなら、家の外の音が聞こえにくい場所にクレートを設置し、安心する居場所を犬に与えてあげる。

 

3.「食事中にフードボウルを守る」

食事中にフードボウルを守るなら、フードボウルは使わずにトレーニングで少しずつ与える。

 

4.「(退屈で)いたずらをする」

犬が退屈していたずらをしているなら、鼻を使ってフードを探させることや、退屈しないで時間を過ごせるように知育トーイなどを利用する。

散歩の時間を増やしたり、回数を増やしたりして、適度な刺激を与え精神的・身体的欲求を満たしてやる。

 

5.「散歩中、引っ張ってくる」

引っ張って欲しくないなら、犬が興奮し過ぎない散歩コースを選んだ上で、引っ張らない状態でいられた時に、手元からご褒美を与えたり、ご褒美としてニオイ嗅ぎをさせたり、引っ張らない状態が長く維持できるように練習する。

 

 

 

まとめ

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いかがでしたか?

意外と意識・無意識的に関わらず、あなたも日常の中で『罰を与えるしつけ』を行なってしまっていたかもしれません。

『罰を与えるしつけ』はやはり、誰にとってもいい効果を生みません。

 

まずは、問題行動を起こす『原因』を突き止め、問題行動改善のために環境を整えることから始めましょう!

 

そして問題行動に代わってどういう行動を取って欲しいのかを決め、それがやりやすくなるよう、ご褒美使って(遊びもニオイ嗅ぎ等も含む)犬にトレーニングをしましょう。

 

 

参考文献:「犬と猫の行動学 基礎から臨床へ」 内田佳子・菊水健史

 

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

あなたの愛犬は、“どこでも”おすわりできますか?〜『般化』の必要性について〜

あなたの愛犬は、“どこでも”おすわりできますか?〜『般化』の必要性について〜

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以前もこのタイトルで記事を書かせていただきましたが、その際は犬の優れた能力である『弁別』についてのお話でした。

 

例えば、「ペットボトル」と一口に言っても、円柱型、四角柱型などの形、300ml、500m、1ℓなどの大きさ、色、ラベルなどによって見た目には異なるため、犬にとっては同じ「ペットボトル」としては見えず、括りが出来ない、いう話でした。

 

まだご覧になっていない方や、『弁別』についてもっと知りたい!

という方は、こちらから記事が見れます!

 

こうした、『弁別』性が高いために、たとえ家の中で「オスワリ!」と言えばオスワリするようになっていても、外に出て「オスワリ!」と言うと、オスワリ出来ないという内容でした。

 

前回の記事でも、言葉の合図だけで犬が「床にお尻を付ける」という行動をとっているように見えていても、実は僅かな人の手の動きや視線を見ていて、言葉ではなくその動きや視線を弁別して「床にお尻を付ける」という行動を取っているのだというお話をしました。

 

そうした『弁別』に関する知識を踏まえ、今回は『弁別』に対する重要な概念である『般化』についてご紹介して行きたいと思います!

 

この、『般化』も、犬のしつけ・トレーニングを考える際には非常に重要な概念なので、一緒に考えて行きましょう!

 

そもそも『般化』とは?

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以前の記事から繰り返しお伝えしているように、犬は非常に観察力に優れているので、『弁別』が本当に得意です。

言い換えれば、『般化」がとても苦手な生き物ということもできます。

 

そもそも、『般化』とはなんでしょう?

ブリタニカ国際大百科辞典によると…

 

 

心理学用語。『汎化』とも書く。

⑴条件付けの過程において、ある<u>刺激に対して特定の反応が起こるようになると、類似の刺激に対しても同じ反応が生起するようになる</u>。これを『刺激般化』という。これに対して、ある刺激に対し反応するように条件付けられたのち、その刺激に対して類似の反応が生起する場合、これを『反応般化』という。

⑵<u>『一般化』ともいう</u>。一般的概念が形成される思考過程。『概括作用』とも言われる。

 

(参照:般化(はんか)とは - コトバンク)

と書かれています。

 

つまり、『般化』とは一般化のことで、犬のしつけの場合、

ある行動を教えたら、それがいろいろな場面・状況でも起こるようになること

と言えます。

 

犬は人間とは違い、この『般化』の能力が高くはないので、ある行動をいろんな場面で起こしてもらえるように学習していく際には、この性質をきちんと理解しておきましょう!

 

般化学習の際に気をつけなければいけないこと

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では、具体的に般化学習を行う際にどのようなことに気をつけなければいけないのでしょうか?

 

今回も、『弁別』の記事と同様に、オスワリを例に見ていきたいと思います。

以下に、般化学習するべき状況について、代表的なステップを挙げて行きたいます!

 

①ご褒美なしで練習してみる

 

前回の記事でも書かせていただいたように、ご褒美を持った手で誘導して犬にオスワリをさせていた場合、ご褒美を手に持たなくても、手の誘導がなくても、言葉だけでオスワリが出来るようにまずは練習します。

 

そのためには、言葉の合図→一拍置く→手の合図→犬がオスワリする→イイコ&ご褒美という順番が欠かせません。

 

「どこでもオスワリできるようになってほしい!」

という方で、般化練習を始めようと考えている方は、まずこの練習から初めてみてください!

 

 

②指示する姿勢・人・時間帯を変えて練習してみる

 

言葉だけでおすわりができるようになったら、次は同じ家の中で、指示をする人が姿勢を変えても同じオスワリの反応が起きるように練習していきます。

 

例えば、今まで人が立って「オスワリ!」と教えていたのに、いきなり寝転がって「オスワリ!」と言っても、まず犬はオスワリしてくれないでしょう。

 

なので、立った姿勢により近い中腰から、同じ練習を始めてみます。

 

中腰でもオスワリが出来るようになったら、次は立膝→次は座りながら→次はしゃがんで→最後に寝転がって…

と、少しずつ段階を踏んで練習していくと、犬もだんだんと練習を理解してくれます。 

 

また、指示する人の姿勢を変えながら練習をするのと同様に、指示する人を変えながら練習もしていきましょう。

 

指示する人が女性か、男性か、子供か大人かでも、オスワリできるかどうかは変わってきます。

 

「お母さんの言うことは聞くけれど、息子の言うことは聞かない」なんて話をよく耳にしますが、これも犬がお母さんと息子さんを『弁別』している証拠です。

 

 

オスワリができるかどうかは、練習する時間帯にも左右されます。

「日中のオスワリはすんなり聞いてくれるけど、夜中のオスワリはなんだか無視される…」

といったことは、時間帯による練習が足りていないことが原因かもしれません。

 

犬と人の距離も少しずつ変えたり、犬と人の向きを変えたりしての練習もすべきでしょう。たった一つのオスワリでも、家の中で般化のためにすべきことは山ほどあるのです。

 

そして、人が思っている以上に視線や体の僅かな動き、表情を犬に見られていることを認識してみてください。

 

 

いつでも・どこでもオスワリできるようにするためには、いろんな人・いろんな状況での「オスワリ」にも対応できるよう練習しておくことが大切です!

 

③指示する環境を変えて練習してみる

 

家の中で、上記の練習や様々なケースを想定した練習を通してオスワリができるようになったら、やっと外での練習に入れるようになります。

 

外での練習は、予期せぬ出来事や家の中では起こり得なかった状況が起こる中で「オスワリ」のトレーニングをすることになります。そうした細かい事柄に対しても犬は『弁別』を行なっているので、飼い主側もそうした点に注意しながら屋外でのトレーニングを行なっていきましょう!

 

終わりに

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今回は、どのようにして『般化』の練習をしていくのかということを、前回の記事に引き続き「オスワリ」を例に解説していきました。

 

犬は本当に私たちがビックリするくらい、私たちの色々な行動や癖、動きを見ていますし、決まった時間に起こる出来事を予測する体内時計も持ち合わせています。

 

犬って本当にスゴイですよね!

一方で、恐怖・不安を感じるなどといったストレスを伴う般化は急速に進むので注意が必要です。

例えば、「ドッグランで白い犬に追いかけられて以来、白い物体がすべて怖くなってしまう」などと言うことがあります。

 

他にもチャイムの音の度に過剰興奮していると、チャイムに似た電話のベルの音などでも般化が起き、同じように吠えるようになったりします。これがストレスを伴う般化は急速に進むという例です。

 

犬が何かに対して恐怖を抱いていないか、怖い経験になっていないか、過剰興奮していないか、この点にも十分に気を付けて、日々のトレーニングを行う必要があります。

 

 

なので、本記事でも紹介してきましたが、細かい事柄にこそ注意を払って、一歩ずつ犬と一緒に般化学習を進めていきましょう!

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

その合図は意味ないかも?愛犬にしっかり伝わる合図とは

その合図は意味ないかも?愛犬にしっかり伝わる合図とは

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突然ですが、皆さんは犬に「オスワリ!」と合図する時に、言葉だけで合図しますか?
それとも、ハンドシグナル(手での合図)で合図しますか?


もしくはその両方で合図する人もいるかもしれません。

実はこの合図の出し方によって、犬の学習の仕方が大きく違ってくるのです !!!

 

特に、言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教えている飼い主さんに、
間違ったしつけの仕方をされている方を見かけるので、今回は
”言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教える場合に気をつけるべきこと”
について書いていきたいと思います!

 

「なかなかオスワリできる様にならない…」
「オスワリできる時とできない時がある…」
などの悩みを持っている方は、役に立つことがあるかもしれません!


『学習の仕方』とは?

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まず、上に出てきた『学習の仕方』という言葉について少し補足をしていきたいと思います。


『学習の仕方』と言われると難しいかもしれませんが、例えば
「ハンドシグナルで『オスワリ』を教えている犬に、言葉で『オスワリ!』と言ってもオスワリしてくれない」
というのは自明ですよね。


つまり
手のサインをみる→オスワリする(→ご褒美もらえる)」
というのがハンドシグナルによる『学習の仕方』というわけです。


同様に
「「オスワリ!」といわれる→オスワリする(→ご褒美がもらえる)」
というのが、言葉による『学習の仕方』というわけです。

 

また、ハンドシグナルで学習している犬でも、
・犬の顔の前に人差し指を立てる
・親指と人差し指でオヤツをつまむ形を作って犬の鼻先から上に手を上げる
・犬の正面に自分の手の平を地面と平行に上に向けておく
などなど… ハンドシグナルの違いも『学習の仕方』の違いとなるわけです。

 

この『学習の仕方』が今回のメインのお話になるので、しっかりと確認してください!


今日お話しをしたいのは
言葉と同時にハンドシグナルで犬に合図を出している場合の話。
「オスワリ!」と言いながら、同時に手の合図も犬に対して送っている場合のパターンです。


この時、飼い主の皆さんは犬が「オスワリ!」という言葉をちゃんと理解していると思っているかもしれません。言い換えると「オスワリ!」という言葉と、「犬がお尻を床に付けるという行動」がちゃんと結びついているのだと思われているのではないでしょうか?

 

 

『視覚情報』と『聴覚情報』による学習

では、言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教える場合を考えていきましょう。
言葉とハンドシグナルでオスワリを教える場合の『学習の仕方』はどうなると思いますか?

 

「そんなの、「ハンドシグナルと『オスワリ!』の掛け声の両方が揃う→オスワリする(→ご褒美)」に決まってんじゃん!」

と即答されたかもしれません。


しかし、それ、実は間違いなんです。
(厳密には”間違い”ではないのですが、ここは厳しく…)

 

犬にとって、『目から入ってくる視覚情報』と、『耳から入って来る聴覚情報』では圧倒的に視覚情報の方が強いのです。


そのため、言葉の合図と同時にハンドシグナルを出していると、実は犬にはハンドシグナルしか届いておらず、言葉は犬の中に届いていません。

 

ハンドシグナルと『オスワリ!』の掛け声の両方でしつけをしている飼い主さんは、試しにハンドシグナル無しで「オスワリ!」と言葉だけでオスワリを促してみると、座ってくれないないことが多いです。(座ってくれれば、今後ハンドシグナルはいらないでしょう!)

 

つまり、ハンドシグナルと『オスワリ!』の掛け声両方で『オスワリ』をしつけているつもりでも、『視覚情報』しか受け取っていないためハンドシグナルでのオスワリしか学習していないということなのです。

 

 

『聴覚情報』で学習させるには?

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では、『聴覚情報』だけで犬にオスワリをしてもらうにはどういう『学習の仕方』をして行けば良いのでしょうか?

 

「言葉だけ使ってオスワリさせればいい!」
というのは最もなんですが、せっかくハンドシグナルを使って練習していたのでそれも活用してあげましょう!


その際には、犬の『時系列に沿って物事を結びつける』という習性を発揮してもらいます!

 

『時系列に沿って物事を結びつける』とはどういうことかというと…


例えば、
「外出しようと思ってリップクリームやハンドクリームを塗っていると、一緒に出掛けられると思って玄関に先回りしている」とか、
「化粧を始めただけで、犬が留守番を予期してソワソワし始める」とか、
「ご飯をあげようと思って餌の置いてある部屋に行っただけで、犬がハウスに飛び込んで待っている」
などなどはということです。

 


これらの現象は、犬が「順番に起こる出来事を時系列で結び付けて覚えている」ということをよく表しています。
この習性を活かせば…

「オスワリ!」の言葉の合図

一拍置く

その次にハンドシグナル

犬が床にお尻を付ける

イイコ!などの褒め言葉(もしくはクリック)

ご褒美

の順番で反復練習をすることで徐々に言葉だけのオスワリに移行できますね!
この練習を繰り返すことによって犬は、
「オスワリ!って言われたから次は手の合図が来る!オスワリをすればご褒美貰える!」と学習を始めます。


そして、「オスワリ!」の言葉を言われただけで、先読みで犬がお尻を床に付けるようになります。
これで言葉の「オスワリ!」の合図だけで「オスワリ」という行動が完成です!

 

 

終わりに

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いかがでしたでしょか?
今回は、”言葉とハンドシグナルの両方で『オスワリ』を教える場合に気をつけるべきこと”に焦点を当てて、犬が受け取っている『視覚情報』・『聴覚情報』の観点から、最終的には言葉だけでのオスワリをしてもらう方法まで解説しました!

 

最後の「言葉だけのオスワリ」への移行で書いたことは理論的には正しく機能しますが、実際に教える時には様々な困難な点があるのも事実です。


特に『般化』という犬の特性を考慮してしつけをしていくことが大切です。
今回の記事で『般化』まで扱ってしまうと、記事の内容が膨大になってしまうので割愛しました…


「『般化』についても詳しく知りたい!!!」
という方は、こちらの記事を参照ください!

 

ハンドシグナルで犬が行動を取れるのでも、もちろん構いませんが、犬と自分の距離があるときなど、言葉の合図だけで犬に合図が届き、望む行動が起こせる方がベストかと思います。


そして言葉の合図だけで犬に学習させることを目標とする場合、ちょっとした自分の無意識の動きや目線が犬への合図になっていないか、細心の注意を払って練習をする必要があるでしょう。(自身のトレーニングスタイルをビデオに撮影してチェックすると良いと思います)

 

今までハンドシグナルを使っていた飼い主さん、言葉だけで犬に合図が伝わるように練習してみてはいかがでしょうか?

 

ワンちゃんと一緒に練習して、一つのことが出来るようになるって最高のコミュニケーションではないでしょうか。

また、たった一つのオスワリでも言葉の合図だけで出来るようになると、飼い主さんにも自信が付くと思いますし、犬と向き合う楽しい時間になるはずです!ぜひ頑張ってみてはいかがでしょうか?

 

この記事で意外に感じた部分は是非、ご自身が愛犬と接する中で確認して見てください!


そして、愛犬とより良いコミュニケーションを取れるように日々を過ごして見てくださいね!

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

9割の人が間違えている!?犬のしつけに主従関係はいらない

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先日、「たまペット」というマルシェのイベントに、JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の一員としてお手伝いさせて頂きました。

その時に、イベントの一環として、イベントに来場している飼い主のみなさんに
『しつけに関するクイズ』を実施させて頂いたところ、かなり大きな反響をいただけたので、そのクイズを記事にしてみました!

 

問題は以下の5問で○×の二択問題です!

あなたは何問正解出ますか?

 

Q1.犬をしつけるには、飼い主が上位に立たなければならない

Q2.犬をしつける時は、褒めてご褒美をあげる方が効率が良い

Q3.ご飯を食べる時は、犬より先に人間が食べなければならない

Q4.引張りっこで犬と遊ぶ時は負けてはいけない

Q5.犬を叱るときは、マズルを持ってダメといって叱る

 

 

 

実は、この中のある問題は会場で9割の方が不正解だった問題です。

以下、それぞれの問題の解説と正解発表をしていきます!

(タイトルである程度わかってしまうかもしれませんが…)自分の答えを横に控えて、正誤確認してみてくださいね!

 

クイズの正解発表の前に

 

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クイズの正解発表の前に、前提として持って頂きたい知識について整理したいと思います。

 

確かに大昔は犬をしつけるには、

「上下関係をはっきりさせて服従関係を作るべき!」

「犬に服従させることが重要!」

だと叫ばれていました。

 

実はこの考え方は、「犬の祖先はオオカミである」という説がベースになっているのです。

 

元来、人間は犬の祖先であるオオカミを統率して一緒に暮らしてきました。

その統率の際に、オオカミの群れの習性的に人間がリーダーである必要があったのです。

 

つまり、オオカミに対して、オオカミの群れの『一番偉いやつ』として人間を認識させる必要があり、そのための主従関係が必要でした。

 

その理論を、

「犬の祖先はオオカミだから!」

という理由だけで、犬にもスライドして「人がリーダーにならなくてはいけない」と大昔は考えられていました。

 

しかしながら、最近の研究では、

・野生のオオカミの群れでは、リーダーそのものが常に変わること

・長い歴史の中で家畜化されてきた現代の犬と家畜化されなかったオオカミを同じように考え当てはめること

などなど、その説自体が疑問視されています。

 

まぁ当たり前といえば当たり前ですよね…

 

原始人と現代人が全く違った生活を必要とする様に、犬とオオカミも全く違った生き方を必要としているということです

 

 

クイズの正解発表

Q1.犬をしつけるには、飼い主が上位に立たなければならない

最新の科学的研究などで、犬の習性を理解し、犬の福祉を重視したトレーニングを行っているドッグトレーナーたちの世界では既に当たり前になってきている事実なのですが、こんなに重要なことを、世の中一般のほとんどの方たちに届けられていないことがショックでした。

 

未だにテレビなどでも

「犬には上下関係が必要!」

「飼い犬に対してリーダーであることを見せつけなければならない!」

など謳っている番組があるのはかなしいですね…

 

上記でも述べた様に、

「犬をしつけるには、飼い主が上位に立たなければならない」

というのは誤りです。

 

したがって、クイズ①の答えは”×”です!

 

Q2.犬をしつける時は、褒めてご褒美をあげる方が効率が良い

犬を抑制し、制圧するしつけ方法では、犬が委縮してしまい抵抗しなくなり意欲的に動くことを止めてしまいます。

犬のことは褒めてしつけ、ご褒美を使いましょう。

ここで言うご褒美とは、食べ物だけではありません。

遊びも抱っこもご褒美に為り得ます。

(「ご褒美について詳しく知りたい!」

という方は、以前執筆した記事がありますのでそちらも見てみてください!)

 

飼い主さんが望む行動を犬が取ってくれた時に、褒めてご褒美を与える方が、犬にとっても幸せで効率的なしつけになります。

したがって、クイズ②の答えは”〇”になります!

 

Q3.ご飯を食べる時は、犬より先に人間が食べなければならない

クイズ③も、オオカミと犬の行動が違うということが現代は解明されているので、食事の順位についても人と犬の関係には影響が及ぶことはありません。

したがってクイズ③の答えは”×”です。

 

そもそも、当たり前ですが人間と犬が一緒にご飯を食べなくても大丈夫です。

 

Q4.引張りっこで犬と遊ぶ時は負けてはいけない

「引っ張り合いっこで勝たせると(調子に乗って)暴れやすくなる」

という類のことが広く言われていたりしますが、近年の研究では

「引張りっこで犬に勝たせても、攻撃性は増さなかった」

ということがわかっていて、実際には、

飼い主におもちゃを動かして引張りっこをしてもらった方が犬が学ぶということもわかっています。

つまり、引張りっこで犬と遊ぶ時、負けてあげても全然構わないのです!

勝ち負けよりも、『犬が何回も遊びたくなる様に遊んであげる』ことが大切です!

 

したがってクイズ④の答えは”×”です!

 

Q5.犬を叱るときは、マズルを持って「ダメ!」といって叱る

このクイズも正答率が低かったです。

犬を飼う時などに、実際にこの様にしつけるようアドバイスを受けた方が多いのかもしれませんね。

 

散歩の時などに、飼い主関係なく

「親犬が子犬のマズルを押さえ込んで動きを抑える」

ということはよくあることですが、それを真似て飼い主がマズルを引っ張って犬の行動を制御するのは適切ではありません。

もし、犬が嫌がることをしつけなければいけない時… 例えば、

・首輪をつける時

・涙やけを拭く時

・歯磨き時

などなどは、オヤツやフードなどを使って、良い経験と結びつくように工夫して学習をさせましょう。

マズルを持って力で制しては、犬はあなたの手を信頼しなくなってしまいます。

 

したがってクイズ⑤の答えは”×”です!

 

 

終わりに

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いかがでしたでしょうか?

 

冒頭にも書きましたが、クイズ①は9割くらいの方が不正解だったのはかなり驚きでしたし、より広めていかなければならない知識だと改めて感じました。

 

今回は少しでも楽しみやすい様にしてみたので、

「面白かった!」

「意外とためになった!」

と思っていただけたら、ぜひお友達にも広げてもらって、犬に関する正しい知識をシェアしていただければ幸いです!

また、このクイズがみなさんの楽しい会話の話題づくりになれば光栄です!

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

あなたの愛犬は、“どこでも”おすわりできますか?〜犬の『弁別性』〜

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突然ですが質問です。

「あなたの愛犬は、”いつでも”・”どこでも”オスワリすることができますか?」

 

 

この質問に自信を持って「はい!」と答えられる方は、日頃から本当に素晴らしいトレーニングをされている方だと思います。

そんな方々には、本記事で学べることはあまりないかもしれません(笑)

 

ですが、多くの飼い主さんは、一部の曇りもなく「はい!」とは答えられないのではないでしょうか?

多かれ少なかれ、多くの飼い主さんは「犬のしつけレベル」に問題意識を持たれていると思います。

 

例えば、私が先日ドッグカフェに行ったとき、

インスタ用の撮影ブースで、愛犬の写真を撮っている飼い主さんをたくさん見かけましたが、どの飼い主さんも、

「オスワリ!オスワリ!オスワリ!」と連呼したり、

「オスワリ!!!」と言いながら犬のお尻を手で抑えて座らせようとしたり、

「オスワ... 座りなさい!!!」と、困った挙句命令口調になったりと…

 

最後までジッと座り続けて、満足いく写真を撮影できたペアは1割にも満たなかったと思います。

 

このように、

「普段は、普通にオスワリしてくれるのに、外出先やドッグカフェになると急に言うことを聞いてくれなくなる」

という問題はなぜ起きるのでしょうか?

 

今回はそんな問題に対して、犬の特徴である『弁別(弁別性)』という視点から、どのようにすれば“いつでも”・“どこでも”愛犬が言うことを聞いてくれるようになるかについてのヒントを解説していきます!

 

 

場面が変わると、言うことを聞いてくれなくなる理由

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まず、前置きをしておきたいと思いますが...

「家以外の場所に場面が変わると、しつけたことでも言うことを聞いてくれなくなる」

という問題を抱えている飼い主さんが多いと思いますが、それは

飼い主さんのしつけ方や、愛犬が全てイケないというワケではありません!

 

むしろ、家の中ではきちんということを聞いてくれるような、コミュニケーションを取れている間柄であれば、関係は良好だともいえるでしょう!

いつもの家の中とは違う、カフェという空間で、他にもたくさんの犬が居て、他にもたくさんの人が居て、ザワザワしていて、店員さんがウロウロしていて、美味しいオヤツのニオイや飼い主さんの美味しい食べ物のニオイもたくさんしている場所だから出来なかったのです。

それは飼い主さんのせいでも、ワンちゃんが反抗的になっているワケでもないのです。

 

こうした『外では言うこと聞かない問題』が発生する原因は単純に、

あらゆる時間・あらゆる<u>場所・あらゆる刺激の中でのしつけ練習が不足している

ということなのです。

 

この「あらゆる場面」で練習をしなければしつけを覚えてくれないという、犬の特性の裏側に『弁別(弁別性)』というものがあるんです。

 

 

『弁別(弁別性)』とは?

『弁別(弁別性)』という単語はあまり耳馴染みがないですよね。

『弁別性』で調べてみると、

 

2つ以上の異なる刺激の間の差異を感知する作用。

操作的には弁別反応,すなわち提示された2つ以上の刺激に対して,被験体が異なる反応をすること。

弁別されうる最小の刺激差異を弁別閾または丁度可知差異という。

言語による伝達が十分に可能な成人の場合には,弁別の測定は精神測定法によることが多い。

乳幼児または動物の場合には,非言語的弁別反応によって調べることができる。

(ブリタニカ国際大百科辞典)

 

と書いてあります。

少し難しく書かれていますが、つまるところ『弁別性』とは、

「些細な違いを認識できる(してしまう)能力」

と言い換えることができます!!!

 

例えば、

「そこの『ペットボトル』とって!!!」

と言われた時、

 

人間であれば、

2L・500mlだろうが、

中身がお茶やら水やらなんであれ、

形が四角・円錐でも何でもいいけど、

とにかく、近くにある『縦長の、飲み口のついたプラスチック容器』を探しますよね。

 

つまり、大きさ・色・中身・形などの些細な違いはとりあえず無視して、

『ペットボトル』という大きな・抽象的な分類として、区別することができます。

 

 

一方で、犬のような『弁別性』の高い生物は、このように高次元で抽象化して物事を分類することが苦手で、同じような物・事に対しても、些細な違いを認識します。

 

 

上記のペットボトルの例で言うなれば、

「この大きい2Lのもペットボトル」

「小さい500mlのもペットボトル」

「キャップが白いのもペットボトル」

「キャップが黄色くてもペットボトル」

などなど…

 

と、1つ1つ細かい違いを指摘しながら、同じものだということを教えてあげなければ、同じものとして学習することができません。

 

 

つまり、見た目が同じようなモノで用途が同じであっても、まるっきり同じモノではない場合、ほんの少しの形の違い、見た目の違い、ニオイの違い、などで区別して「違うモノ」と判断する生き物なのです。この似ているモノを括りとして認識せず、別物だと判断することを「弁別」と呼びます。

 

犬は非常に「弁別」に優れている生き物なのです。

 

『弁別性』を意識したトレーニン

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家の中でオスワリ出来るワンちゃんが、家の外に一歩出ると途端にオスワリ出来なくなる理由は、この『弁別性』の高さゆえだということが理解できたかと思います!
そう考えると、

『あらゆる時間・あらゆる場所・あらゆる刺激の中でのしつけ練習』

が重要だということは、自明ですよね。

 

なので、愛犬がどこでもオスワリをできるようにするためには、

・散歩先の公園

・何気無い散歩中

・ご飯の前以外の家の中でいきなり

など、様々な場面で練習していきましょう!

 

たかがオスワリ一つと思われるかもしれませんが、自分の犬を守るためにも他人や社会に迷惑を掛けないためにも、インスタの写真撮影の時にも(笑)、大変有効な指示の一つです。

 

万が一首輪やハーネスが外れてしまった時、リードが手から外れてしまった時、子供が道路の向こうから走ってきた時、狭い道で他人や他犬とすれ違う時、横断歩道で待っている時、角を曲がる前、他の犬が近づいてきた時、カフェで店員さんが給仕してくれる時、どれも「オスワリ」ですぐに「お尻を床に着ける」ことが出来、その体制を維持出来れば、困ることはほとんどないはずです。自分の犬の危険回避をすることが出来ますし、すれ違う人や、カフェの店員さん、他の犬の飼い主さんなど他人に迷惑を掛けることも減ります。

 

終わりに

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いかがでしたでしょうか?

犬は『弁別性』が高い生き物ゆえに、様々な場所でのしつけ・トレーニングが必要だということが理解できたかと思います。
『オスワリ』1つとっても、“いつでも”・“どこでも”できるようにするには、たくさん経験を積むことが大切です。

 

あらゆる状況下でも「オスワリ」と言われたら、犬が「床にお尻を着ける」ことが出来るように、色々な場所や時間、自分が命令を出す立ち位置などの場面を変えて、たくさん反復練習していきましょう!!

 

また、今回は特に「オスワリ」について解説を行ってきましたが、

・フセ

・タテ

・ハウス

・オイデ

・マテ

など、他の基本動作も例外なく、様々な状況で練習することをオススメします。

 

 

「なんとなく出来る」から、「どんな状況でも出来る」

ように、いろんな場面で練習していきましょう!

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

あなたは大丈夫?犬を飼ってない人から嫌われる迷惑行為3部門!

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突然ですが、あなたは、『犬の行動』を他人がどのように感じているかを考えたことはありますか?

 

犬を飼っている飼い主さんにとって、

 

「犬だから仕方ない!」

「むしろ、それが可愛い!」

「というか、それが普通!」

 

と思うような(むしろ当たり前すぎて何も思わないかもしれないような)『犬の行動』は、

犬を飼っていない人にとっては

 

「めちゃくちゃ迷惑!」

「なんであんなことするの?」

「普通はありえないけどな…」

などなど…

 

迷惑だったり、嫌な印象を持たれたりしていることって世の中に結構あると思います。

 

今回は、そうした“飼い主”と“犬を飼っていない人”たちの間に起こりがちな認識の違いに焦点を当ててた記事を書いていきたいと思います!

 

飼い主の方は、知らず知らずのうちに迷惑をかけていないか要チェックです!
また、犬を飼っていない方にも、実は「犬が生きていくためには仕方のないこと」もあるので、そうした理解を深めるためにも是非ご一読していただければ幸いです!

認識の違いが起きがちな場面

今回の記事では、『犬(やその飼い主)の行動』に対する飼い主と非飼い主の認識の違いを、迷惑行為が起きやすい場面別に説明して行きたいと思います。

 

 

『散歩中』に起きやすい迷惑行為

『公共の場』で起きやすい迷惑行為

その他の迷惑行為に感じられやすいもの

 

 

の順にご紹介していきますので、飼い主さんたちは自分に当てはまるものがないかチェックしながら読んでみてください!

 

『散歩中』に起きやすい迷惑行為

まずは散歩中に起こり得る状況から見ていきましょう。

散歩中に起きやすい、飼い主さんと犬を飼われていない方との認識の違いには以下のようなものが挙げられます。

 

1.狭い道でもリードを目一杯伸ばして犬を自由に歩かせる

これは普通に人とすれ違う時でもそうですよね。狭い道で人とすれ違う時は、少しずつ避けあって譲り合いますよね。
犬を連れている時も当然同様で、道が狭いならばリードを短く持つなどの気遣いは必要ですよね!
また、「犬が苦手」など、犬に恐怖心を抱いている人もいるかもしれないので、すれ違う際には誰彼構わず飛びついたり吠えたりしないような対策も必要です。

 

2.他人の家の前など、不適切な場所で排泄をさせる

これも言語道断ですよね。処理をすればいいというものではなくマナーの問題ですよね。マーキングでも、もちろんダメです。
犬がトイレを行くタイミングを把握して、他人の迷惑にならない場所で処理をしましょう!

 

3.曲がり角などで犬が先行して飛び出す

これは意外ときにされていないので、要注意なものです。
犬が先に飛び出すことによって、予期せぬ事故を誘発してしまいます。
(例えば、交通事故の原因や、犬が子供を傷つけると言った傷害の原因に…)
常に飼い主さんは、犬と周囲の状況を把握して安全なお散歩に努めましょう! 

 

4.相手の許可なく、犬同士を挨拶させようと犬に任せ引っ張らせて他の犬と近付ける

以前の記事にも書かせて頂きましたが、犬も人間同様、犬同士の『相性』があります。
会いたくない犬・近くに寄りたくない犬がいるので、自分の愛犬が他犬に対して拒否反応を示していたら無理に接触させないようにしましょう!

 

5.他の犬・バイク・子供に吠え掛かる

吠え掛かられるのは誰だって良い気持ちはしません。

バイクや他の犬に飛び掛かって、他の人を巻き込んでしまったり、事故になる可能性もあります。

 

6.他人に喜んで飛び付くのを止めない

犬好きで、「いいのよ」と言ってくれている人にが多いのも確かにあります。
しかし、①でも書いたように世の中『犬好き』な人ばかりではありません。

もし、愛犬が人懐っこくて、誰彼構わず飛びかかるようなら、きちんとそれを制しながら節度を守ったお散歩をすることが大切です。

 

7.自転車で散歩する

これは意外と住宅街で散歩をしている方に見受けられる現象ですね。

効率やスピードを重視したり疲れるのを回避しようと、自分は自転車に乗って愛犬のリードを引っ張るということをするのは(自明ですが)とても危険です!

犬が何かに驚いて急に全力で走り出した時、<strong>周りにいる人をリードごと巻き込んで事故になる恐れがあります</strong>。

このように自転車での散歩は思わぬ大怪我につながる可能性が高いのでやめるようにしましょう!

 

8.排泄の後、土を蹴って散らかすのを止めさせない

犬の排泄物が染み込んだ土を巻き散らかされたら、誰だって嫌じゃないでしょうか。

 

9.場所を選ばずに、犬同士を遊ばせる

犬同士を遊ばせること自体はとてもいいことです。
またドッグランなど、犬同士の交流の場は、正しい利用方法を覚えて積極的に使っていきましょう!(ドッグランについてのリンク)。

 

ただし、いわゆるTPOをわきまえずに、犬同士を遊ばせていると他の遊んでいる人の迷惑になってしまう場合があります。

例えば、公園でおもむろに犬同士を遊ばせていて、犬たちが興奮状態になって、他の遊んでいる子供たちに噛み付いたりするかもしれません。

そうした、『遊び場の環境』をしっかり把握して遊ばせることを忘れないようにしましょう!

 

10.相手の許可なく、犬に触ろうと手を伸ばす

これもよく誤解されやすいポイントですね。
いくら相手のワンちゃんが可愛いからと言って、無断で触ることは基本的にはよくありません。初対面の人間が嫌いな犬もいますし。

何より、常識的に考えて、これが人間だったら“痴漢”ですよね?

もし相手の犬と触れ合いたかったら、きちんと許可を取りましょう!!!

人間が、可愛いワンちゃんだから触りたいと思っても、他人が苦手な犬かもしれませんし、上から手を伸ばされる恐怖から噛み付く学習をさせてしまう可能性もあります。

きちんと相手の飼い主の方に、触っても良いか許可をとりましょう。

 

11.相手の許可なく、犬に食べ物を与える

これも言語道断ですね。

アレルギーや体重制限など、その個体によって食べられるもの・食べていいものも異なります。飼い主さんの許可なく勝手に餌付けをすることはやめましょう。

 

 

以上、散歩中に起こりがちな『認識の違い』でした!

認識の違いというか「当たり前」と感じるようなものから、意外と思われるものまで様々あったと思いますが、人によって感じ方はそれぞれ多かれ少なかれ変わってきます。

自分が見落としていたような場面に関しては、次回以降気をつけながらお散歩してみてください!

 

 

『公共の場』で起きやすい迷惑行為

次にカフェや公園など公共の場を考えてみましょう。

公共の施設などは、より人間や他犬との接触が密になります。

そうした接触の際に起きがちな問題を正しく認識していきましょう!

 

 

1.公園でブラッシングをして抜け毛を放置する

ブラッシングをすれば、当然毛は抜けます。
「公園でブラッシングをするな!!!」

とまでは言いませんが、ブラッシングをした毛を放置されて気分のいい人はいませんよね。

まして、周辺にアレルギーを持っている方がいたり、その後その施設をアレルギー持ちの方が利用したら、命に関わる問題になりかねません。

 

屋外などでブラッシングをする際は、そうした危険性をきちんと配慮して行いましょう!

 

2.公園のベンチに犬を乗せる

これは意見が分かれるところだと思います。

ただ日本人はかなり潔癖なところがあるので、

「野外を土足で歩いたまま、椅子(ベンチ)の上に乗せないでほしい!」

という方も多いと思います。

なので、できるだけ犬はベンチに直接乗せず、載せるのであれば、膝に抱えたり、シートをひいてその上に乗せてあげるのがいいでしょう。

ただ、シートを敷く場合は材質を吟味しましょう。

トイレと勘違いして、脱糞等されてしまうとさらなる被害を呼びますので…

 

3.カフェの椅子に直に犬を座らせる

ドッグカフェなど、動物が一緒に食卓を囲めるレストラン・カフェなどでも、なんでもありというわけにはいきません。

人間用の椅子に直接犬を座らせて欲しくないお店もあると思います。

そうした場所では、当たり前ですが、お店のルールや店員さんの説明などに従って対処していきましょう。

 

4.カフェのテーブルから犬にモノを食べさせる

  人間が使用するように設計されたテーブルから、愛犬に食事を運んでいると、

「上(テーブル上)に食事がある!」

と犬は学習し、自らテーブルに上がろうとします。

 

 こうすると、テーブルは衛生面が悪化してしまい、お店も・飼い主さんも・次使うお客さんも全員が不快な思いをしてしまうのでやめましょう!

 また、テーブル上の食べ物を食べさせないのは、次に紹介する危険事項を防止するためでもあります。

 

5.人と同じ食器やスプーンなどで犬に食べ物を与える

  基本的にドッグカフェなどでは、人間用の食べ物・容器と犬用のそれらとは分けられています。
これには、きちんとした理由があり、『人畜共通感染症を防止するためなんです。
言うなれば、『O-157』を発生させないよう衛生管理に努めるのと同様に、『人畜共通感染症』を発生させないように人間の食物・容器と犬の食物・容器は分けられているので、それを無視して、料理・容器を共用しないように気をつけましょう!

 

6.カフェの中でマーキングしてしまう

これは問題外ですよね!!!
カフェ・レストランは衛生第一です。
マーキングの問題はトイレを済ませておけば解決できる問題なので、入店前にきちんとトイレを済ませて起きましょう!

 

 

以上が、公共の場所で起きやすい迷惑行為になります。

繰り返しになりますが、公共施設は他の人間・犬との接触が増える場面なので、相対的に問題も増えます。上記点に気をつけて、楽しく交流できるようにしていきましょう!

 

 

 

その他の迷惑行為に感じられやすいもの

ここまで、『散歩中』・『公共の場』で迷惑に感じられやすい場面についてみてきました。

最後に、上記2場面には分類できないけれど、よく迷惑行為が起きがちな場面について解説して行きたいと思います

 

 

1.運転中に犬を抱っこしている

実はこれ、れっきとした『法律違反』なんです。

犬だけに限らず、運転席に運転手以外が座ることは法律で禁じられています。

車で愛犬をどこかに連れて行く際は、きちんとケージに入れてあげましょう。

その方が、愛犬にとっても安全です!

 

2.車の中から犬が顔を出している

ハイ。実はこれも『法律違反』なんですねー。

実際に、

「車内から顔を出している犬に驚いてバイクが転倒した」

という事故も起こっている危険なものです。

 

万が一、犬が窓から外に出てしまったら大事故につながります。

絶対に犬を車の窓から覗かせることはさせないようにして、ケージの中に入れてお出かけしましょう!

 

3.車の中から犬がずっと吠えている

上記と同様で、隣を通りかかった車・バイクなどに吠えかかってしまったら、大きな事故の元になりかねません。

また、犬もリラックス出来ている状態とは決して言えません。

車の中では、刺激にさらされない環境を作り、犬自身も落ち着けるようにしましょう。

 

 

 

終わりに

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いかがでしょうか?

どちらかというと、『飼い主が盲目的になりがちな部分』を多く取り扱いましたが、中には

「そんなことが迷惑になってたんだ!」

と思うようなこともあったかもしれません。

 

 

愛犬家だからといって、皆同じ感覚を持っているわけではないですし、迷惑に感じることも多種多様です。

また、飼い主だけに限らず、世の中には犬を苦手に感じている人もたくさんいます。

そんな人たちにも、犬を倦厭されずに受け入れてもらえる世界になったら嬉しいですよね!

 

そのためには、互いに気を使った最低限のマナーが必要です。

今回ご紹介したものは、認識に違いがあるもののごく一部です。

みなさんの日常の中で、

「あれ、これってもしかして迷惑かも…」

と思うことが大切ですので、日々の中で周りを観察しながら生活してみてください!

 

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿

 

ドッグラン初心者でも安心!ドッグランでのマナーと注意事項

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突然ですが!!

あなたは、

ドッグラン

に行ったことがありますか???

 

最近は、公共施設や、都内でも大きめの公園など、

少しずつドッグランを見かける機会も増えて来ましたね。

 

ドッグランが増えて来たことによって、あまりドッグランに馴染みのなかった飼い主さんも、

「意外と近くにあるし、ちょっと行ってみようかな?」

と、お出かけ先として検討することも多くなってるのではないでしょうか。

 

ドッグランは、普段のお散歩や外出とは異なり、リードやつなぎなどの縛りがなく、愛犬を思う存分解放してあげられる素敵な場所です!

 

また、解放された犬同士の『コミュニケーション』が行われるのも、ドッグランの大きな特徴だと思います。

 

普段の散歩や公園などでは出来ないことですから、ドッグランに魅力を感じている方も多いでしょう。

 

そうした、『開放感』という素敵なメリットがある一方で、ドッグランならではの難しさもあります。

 

ドッグランに行かれたことのある方の中で、そうした経験をされた方も少なくないと思いますが、例えば…

 

「自分の犬が追いかけ回された!」

「他の犬から執拗にマウンティングされた!」

「1匹の犬を、他の犬たちが大勢で追いかけ回していた!」

「ベンチの下で怯えている犬がいた!」

「随所で犬の悲鳴を聞いたり、犬同士のケンカを見た!」

 

などなど、弱肉強食というか、解放されたが故の『野生感』が垣間見られ、かなり不安になることも多いですよね。

 

 

今回は、そうしたドッグランでのトラブルや難しさを避けるために、

『ドッグランで飼い主が知っておくべきこと』

についてお話ししていきたいと思います。

 

ドッグラン初心者の方や、ドッグランに不安のある方のご参考になれば幸いです。

 

ドッグラン利用で知っておくべきこと

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・「他犬全員と仲良くなれるわけではない」ことを知る。

ドッグランには様々な種類・性格の犬と、飼い主さんが訪れます。

犬も人間同様、『個性』があるので、どんな犬ともフレンドリーに上手に遊べる犬もいれば、コミュニケーションを取るのがあまり上手でない犬もいます。

 

また、人間同士に相性があるように、犬同士相性の良し悪しが存在します。

このように、犬同士にも秩序や趣向があり、

「ドッグランにいる犬はみんな友達!」

というわけではないということを知っておきましょう!

 

またドッグランに訪れる犬の中には、犬同士のボディランゲージの会話をよくわかっていないものもいます。

 

原因としては、

・子犬の頃に親兄弟と遊んだ経験が少ない

・母子分離が早過ぎた

などが挙げられます。

 

本稿での詳しい説明は割愛しますが、幼少期のコミュニケーション教育について興味のある方は、こちらの記事をご参照ください!

(2017/10/10分記事参照)

 

コミュニケーションがうまく取れていないと、ある犬が

「やめて欲しい」

「放って置いて欲しい」

というサインを送っていても、そのサインが読めない犬は、相手に対して一方的な態度になってしまったり、相手を追いつめてしまったりすることがあります。

 

そうしたすれ違いが生じると、追い詰められた犬は

・逃げる

・その場で固まる

・攻撃する

と行った行動を起こします。

 

こうした行動が出る前に、退避させることが大切ですが、もしこうした『不快のサイン』を見て取れたら、すぐに犬同士のコミュニケーションを中止させましょう。

 

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・「ドッグランは犬から目を離していい場所ではない」ということを知る

この点を勘違いされている方がたまにいるのですが、これは非常に大切なことです。

もし、自分が子供の親で、公園に我が子を連れて行って、その子から目を話すということは普通しませんよね?

 

それと同様に、遊んでいる犬たちが安全かつ楽しく遊べるように、犬のサインを読み取り手助けをしてやることが、ドッグランでは大切です。

私たち自身が犬からのサインを見つけ、それに気づき介入して助けてあげる必要があるのです。

 

例えば、犬がドッグランで犬がよく表すサインとして

<怖がっている時>

・尻尾が後ろの足の間に下がっている

・背中を低くしている

・近づいて来る犬から目線を逸らしている

・耳が頭にぺったりとくっついている

・相手の犬を見ようとせず、クンクンと地面のニオイをそわそわ嗅いでいる

 

などがあります。

 

他にも、

<他の犬に対して一方的な態度になっている時>

・尻尾が立っている

・相手を直視して、ジッと見ていて目を逸らさない

・前傾姿勢で、前のめりで真っ直ぐ相手に向かっていく

・耳をぴんと前に立てている

・相手を執拗に追い回す

・相手に対して執拗に吠える

・多勢でその犬を囲む

などなど。

 

こうした愛犬のサインから、ドッグラン内にいる自分の愛犬がどんな状況にあるのか、目を話すことなく把握しておくことが大切です。

 

繰り返しになりますが、

「ドッグランは犬から目を離していい場所ではない」ということを知ることが大切です!

 

「相手の犬が怖がっているな」

と感じた場合や、

「これ以上ランの中に置いとくのはマズいな」

と感じた時には、自分の犬にリードを付け、一旦ドッグランから出てその場を離れるなど配慮しましょう。

 

そうした配慮を怠らなければ、ドッグランはのびのびと遊び回れる楽しい場所ですので!

 

終わりに

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いかがだったでしょうか?

他にも細かい注意事項はたくさんありますが、

今回は本質的に気をつけておかなければ行けないドッグランでの注意事項を2つご紹介しました。

 

ドッグランの中で、犬たちはボディランゲージを使ってたくさんのサインを出しています。そして、そのサインに気付けず、コミュニケーションを取れない犬たちや、愛犬の危機に気付けない飼い主さんがたくさんドッグランには来てしまっているのが実情です。

 

そうした、『マナー違反』の方から被害を受けないためにも、また自分自身が『マナー違反』となって他犬や飼い主さんに迷惑をかけないためにも、本稿の2つの注意事項を元にドッグランに挑戦して見てくださいね!

 

繰り返しになりますが、基本的にドッグランは、普段より解放された場所で様々な体験がある素敵な場所です。

 

犬も、飼い主さんも、皆が気持ちよく楽しめる場所になるよう、ぜひドッグラン内のマナーを守って、楽しいドッグラン体験を送ってください!

どうすれば犬はしつけを覚えてくれる?絶対知っておくべき3つの学習法!

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皆さんは犬がどのように行動を覚え、学習していくのかご存知でしょうか?

 

「しつけをしたのに、愛犬がいうことを聞いてくれない!」

という方の中には、『具体的なしつけのやり方』ばかりを気にして、こうした『しつけの基本の考え方を知らないままの方もいます。

そうした場合、この『しつけの基本の考え方』をマスターできると、愛犬がいうことを聞いてくれる様になることも多いのです!!!

 

今回は、「どの様にしつけを行えば、犬は正しく学習してくれるか?」というテーマに対して、しつけの3つの基本方法というところに焦点を当てて、解説していきたいと思います!!!

 

 

基本のしつけ3種類

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今回の記事では、しつけの3つの基本の考え方として、

・オペラント条件付け

・古典的条件付け

・馴化

について解説していきたいと思います。

 

『オペラント条件付け』

犬のしつけ方法に興味のある方や、実際に行なっている方の中には、

「犬が望ましい行動をした直後に褒める、ご褒美を与える

ということがしつけだと知っている方もいると思います。

 

オスワリの例で例えると、

「オスワリ!」と言う

     ↓

犬がお尻を床に付ける

     ↓

「イイコ!」と褒めてご褒美を与える

といった図式です。

 

 

 

この様な、学習の仕方をオペラント条件付けと呼びます。

犬の行動に対して評価する方法です。

 

オペラント条件付けでは、

「ある刺激を受けて、ある行動を取ると、その直後にその個体がメリットと感じる良い事が起こる」

と繰り返し学習させることで、その行動の頻度を上げていきます。

 

例えば、下の図は“遊び”におけるオペラント条件付けです。

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他にも、

縄張り意識から、宅配便の人に対して家の中から吠えまくる

     ↓

宅配便の配達員の方が去る

 

この場合、配達員の方が犬の吠えた声が原因で立ち去ろうと、そうでなかろうと犬にとっては、

「吠える=配達員が帰る」

と学習されるわけで、これもオペラント条件付けです。

 

そしてそれが繰り返されれば繰り返されるほど強固な行動に変わっていきます。

 

また、上記の様に

「ある行動を起こした時に、メリットを与えることで、その行動を自発的に起こす様にしつけていく」というのもオペラント条件付けですが、その逆に、犬の望ましくない行動を減らす手段として、

「ある行動を起こした時に、メリットを<u>与えない</u>ことで、その行動を自発的に起こさない様にしつけていく」場合も、オペラント条件付けの一つです。

 

 

例えば、

犬を撫でる

犬が盛り上がって、飛びついてきた、

触るのを止めて背中を向ける

 

その犬にとって触られることが好きだった場合、飛び付いた結果、報酬がなくなってしまうので、

「触られて飛びつく=触られるのをやめられてしまう」

というふうに学習して、今後飛び付くという行動が減少していくことが予想されます。

 

いずれについても、

「犬の行動に対して、評価が起きる」というのがこのオペラント条件付けです。

 

『古典的条件付け』

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もう一つの学習の大きな柱は、古典的条件付けと呼ばれるものです。

いわゆる『パブロフの犬』と言われる条件付けのことで、パブロフ型条件付けとも言われます。

 

「ベルの音を聞かせた直後に、犬にフードを与える」

という実験を繰り返したところ、

「ベルの音を聞いただけで犬はヨダレを垂らすようになる」

という理論ですね!!!

 

この、『古典的条件付け』が、前の『オペラント条件付け』と大きく違うところは、犬の行動を評価している訳ではないということなんです。

 

つまり、犬がどんな行動を取っていても、無条件に結果が付いてくる学習のことを言います。

犬がオスワリしていようが、

犬が飛び付いていようが、

伏せていようが…

 

とにかく、どんな状態にあったとしても、ある刺激が知覚されたら、その直後に必ず報酬に結びつく何か起こるようにして、学習させていく方法のことを『古典的条件付け』と言います。

要は、「反射的に○○させる」という状態を学習させることです!

 

『古典的条件付け』を、人の場合で例えるなら…

 

「梅干しを食べる

梅干しは必ず酸っぱい

唾液が出る

 

ということを、繰り返していくと、食べる前に「梅干を見る」ということをするので、この「梅干を見る」段階で唾液が反射的に出てしまうようになるんですね。

人によると、目の前に梅干すらないのに、想像しただけで唾液が反射的にでる人もいますよね!

 

犬の場合も、ほとんど人間と同様です。

例えば…

ご飯がしまってある棚を開ける

     ↓

棚を開けるとき、大きめの音がする

     ↓

ご飯をあげる

 

という流れで、犬にご飯を繰り返しあげていると、犬にとっては

「棚の開く音がすると、ご飯がもらえる!!!」

と学習するとようになり、棚が開くだけでご飯皿の前で待機したり、よだれを垂らしたりするようになるというわけです。

 

冷蔵庫を開ける音がすると駆け寄ってきたり、お菓子の袋の「バリバリ」「ぺりぺり」っという様な開く音を聞くとすり寄ってくるのは、こうした『古典的条件付け』の賜物なのです。

 

ご飯を入れてある棚を開ける音がすると、犬が飛んでくるとか、冷蔵庫を開ける音がすると犬が飛んでくるとか、そういった経験はありませんか?

 

またお菓子の袋のような「ペリペリ」「パリパリ」といった音がすると寝ていたはずの犬が起きてきて傍にいるとか、ありませんか?

 

その音の直後に、良い経験を積んできたゆえの学習なのです。

 

また、『オペラント条件付け』と同様に、この『古典的条件付け』にも、ハッピーな気持ちの学習だけじゃなく、逆のアンハッピーな気持ちの学習もあります。

 

 

例えば…

他の犬が苦手な犬が、

散歩中に犬に出会う度に、避けようとして吠える

     ↓

「吠えちゃダメ!」と飼い主から怒られる

     ↓

恐怖心から吠えているのに、怒られて、リードで引っ張られるなど、不快な経験をする

 

こうした経験を繰り返せば、「他の犬にあったら、怖い上にリード引っ張られて嫌な思いをする」と反射的に他の犬を避けるようになってしまいます。

 

これが深刻化すると、散歩自体嫌いになってしまって、家で散歩用のリードが準備されるさ音がした瞬間、嫌な気持ちをしてしまうという、悪循環に陥ってしまうこともあります。

 

この様に、『古典的条件付け』も、『オペラント条件づけ』と同じ様に、犬のしつけ方に大きく関わっているのです。無意識に行動を学習する分、オペラント条件付けよりも注意を払うべき学習方法かもしれませんね。

 

ただ、私がドックトレーナをしていて、とても感じることなのですが。

この『古典的条件付け』を意識している人が、あまりに少ない!!

 

無意識を意識するということはとても難しいことなのですが、

「こういう反応を繰り返すと、こういう風に学習する(しちゃう)かな?」

と想像しながら愛犬と接して会えることが大切です。

 

こうしたことを意識しながら、

この「古典的条件付け」、犬の情緒面に働きかけるのにとても重要な役割を果たします。

 

例えば、ブラシを苦手にしているコには

ブラシを見せてオヤツ

ブラシを嗅いだらオヤツ

ブラシを見たらオヤツ

ブラシに近づいたらオヤツ

ブラシの背が触れたらオヤツ

ブラシの背が一撫でしたらオヤツ

ブラシが一撫でしたらオヤツ・・・・

のように順を追って欲張らずに犬にとって良い物だと無条件に提示していくと、ブラシが苦手なモノではなく、好ましい物に変化していきます。

 

個性を大事にして、愛犬が反応しない程度の小さな刺激から学習し始めていきましょう!

 

『馴化』

 そして最後の1つが「馴化(馴致)」です。

 

これはいつの間にか、犬が音などに自然に慣れていくことです。

家の近くで解体工事などがあって最初は吠えたり反応していた犬が、いつの間にか慣れて吠えなくなって気にしなくなっている状態などを指します。

 

 

まとめ

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いかがでしたか?

今回は、犬のしつけの3つの基本方法について解説しました。

『オペラント条件付け』

『古典的条件付け』

『馴化』

 それぞれ、文章で書いて見ても

「なんとなくわかるかなぁ…」

とちょっと理解できるくらいで、完璧に理解をするのは難しいことだと思います。

 

そうした時は1人で抱え込まないでください!

ドッグトレーナーなど、犬の専門家があなたの力になります。

専門知識を持ったドッグトレーナーは、犬だけではなく飼い主さん自身がこの先、自分で自分の犬のしつける応用力、対処する力を伸ばしてくれるはずです。

 

話は逸れましたが、今回お話しした『3つの基本方法』をマスターして、愛犬とより良い関係を築いていってください!

 

 

 

【栗林 純子】

空ドッグスクール

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿