それは生まれつきのせい?あなたの犬にしつけが聞かない理由
犬を飼っている人なら誰しも、一度くらいしつけが上手くいかなくて悩んだことや、いうことを聞いてくれなくて落ち込んだ経験があると思います。
(かく言う私も、『ドッグトレーナー』といういわゆる『犬のトレーニングのプロ』をしていますが、犬のしつけには大変苦労しています…)
きちんとしつけたつもりで、いざ合図をしても、いうことを聞いてくれなかったりすると、落ち込んで、
「自分の育て方が失敗だったのかな…」とか
「甘やかしてしまったから、こんなにダメな犬になってしまったのか」
「あのしつけ方で本当に正しかったのだろうか…」
などなど、愛犬がいうことを聞いてくれなかった原因を自分のしつけの悪さだと思い込んで、自分を責めて悩んでしまう方がとても多いです。
そんなことが重なると、『育犬ノイローゼ』のような、一種愛犬を育てることに対するうつ病のような精神状態に陥ってしまう方もいます…
ただ、上記のような、
「ちゃんとしつけたつもりなのに、愛犬がいうことを聞いてくれない!」や
「なぜか問題行動が一向に止まない…」
というのは、
実は、あなたにだけ原因があるわけではありません。
では、愛犬が問題行動をやめるようにならない原因はどこにあるんでしょうか?
今回は、「犬が飼い主のもとに来るまで」の過程に焦点を当てて、その原因について解説していきます。
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もちろん、犬の性格と、犬が行動を決める基準は、「生まれ持った気質」と「これまでに経験した学習」の割合によるので、手元に迎えてからの飼育環境も大きな要因の一つです。
犬のしつけ方のサポートをしていくのが、ドッグトレーナーの私の仕事ですから、レッスンで「これまでに経験して学習した望ましくない犬の行動」を「新たな望ましい犬の行動」に塗り替えていけるようアドバイスして練習をしていきます。
けれども、問題行動と捉えられる犬の行動の要因は、それだけなのでしょうか?
本当に、原因は飼い主さんだけにあるのでしょうか?
実はそうではありません!
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犬の性格と行動を決定する要因
人間や他の生物もそうですが、犬の”性格”と”行動”を決定する要因は、
『生まれ持った気質(先天的要因)』と『これまでに経験した学習(後天的要因)』
の割合によります。
なので、「正しいしつけを行う」というのは後天的な部分に関してとても重要な事項ですよね。
しかし、いくらしつけを頑張っても、『生まれ持った気質』は変えることができません。
例えば、
・両親犬の気質などの遺伝的な要因
・神経系の機能的な障害
・犬種による行動特性の違い
などは先天的なものなので、飼い主さんの手元に来てから発生した問題ではないし、しつけでどうこうできる問題でもありません。
また、『これまでに経験した学習(後天的要因)』に関しても、
「愛犬をお家に迎え入れた後の学習(自分がしたしつけ等)」と「愛犬が家に来るまでにした学習(生後〜家に来るまで)」がありますよね。
そして、とりわけ、「愛犬が家に来るまでにした学習」の中でも、
『望ましくない犬の行動の学習」については、飼い主さんだけの責任とは言えない要因が実はあるのです。
(『望ましくない犬の行動』に関して、詳しくは<a href=???>こちら</a>を参照ください!)
家に来るまでに学習してしまった、望ましくない行動
愛犬が家に来るまでに経験してしまいがちな、望ましくない行動の原因には以下のようなものが挙げられます。
もし、それらに関連するような問題行動を今、あなたの愛犬が患っているなら、あまり自分のしつけだけを責めすぎないで、昔の経験まで遡った対処をして挙げてください。
①愛犬が胎児の時の、母親の精神状態
実は、愛犬の母親が妊娠中にストレスフルな生活をしていると、その影響は胎内の子犬にも出ることが研究から明らかになっているんです。
その影響で、子犬には
・学習能力の低下
・刺激に対する過敏性の発現
・情動的に不安定になる
などといった問題行動が出てしまうことがあります。
②愛犬が子犬の時、母親に世話をされない
子犬が産まれた後、母犬が子犬の世話をあまりしなかった場合、成長した子もまた、あまり子犬の世話をしない母犬となります。遺伝的な要因だけではないのです。
③”移行期”の飼育環境と、”社会期”の経験
“移行期”と呼ばれる犬の生後14~21日前後の飼育環境と、
“社会化期”と呼ばれる、生後3週(21日)~12週齢の経験は、どちらも子犬の今後の成長基盤に大きく影響を与えます。
<”移行期”の飼育環境に関して>
例えば、犬は本来の習性として、寝床を汚すことを嫌うことが多いです。
しかし、”移行期”から長い間、寝床とトイレを分けずに狭いケージ内でペットシーツしか置けないような環境で育ってしまった場合、食糞の癖が付いたり、排泄物の上で寝ることに慣れてしまったりします。
これではトイレもハウスも検討つくはずもありませんね。
トイレ・ハウスがイマイチ上手くいかないという方は、こうしたバックグラウンドがないかどうかも視野に入れながら、しつけを見直してみてください。
<”社会期”の経験に関して>
「三つ子の魂百まで」と人間の諺にもあるように、犬も小さい頃、とりわけ”社会期”に学習したことは、その後生涯、学習基盤となります。
その時期に、母子分離・兄弟分離を早計にしてしまうと、子犬の精神面に大きな影響を与えます。
例えば、その様な”社会期”のショッキングな経験の結果として、
・不安要素の発現
・怖がりの傾向が強い成犬になる
・特定のことに対するトラウマ
などの影響が強く残ってしまったり…
また、この”社会期”前半には、犬同士のコミュニケーション方法であるボディランゲージの取り方を母親が子犬に教育し始めます。
この時期にすでに、母子分離をしてしまっていると、子犬はコミュニケーションの取り方を理解しないまま大人になってしまうので、無駄吠えや散歩・ドッグランでのトラブルに繋がりやすくなってしまいます。
この様に、母親の胎内にいる時〜幼少時の教育は犬の基盤となる部分を作っていくものですので、そうした部分に問題がある場合、ひとえに
「飼い主のしつけが悪いから、問題行動が減らない!!!」
というのは間違っています。
こうした、「愛犬のバックグラウンドにはないがあるのか」をきちんと理解して挙げた上で、お互いが過ごしやすくなる環境作りに向かっていきましょう!!
終わりに
いかがでしょうか?
今までは、「しつけの方法」など、犬を家に迎えてからのトレーニングについての記事が多かったですが、飼い主さんの手元に渡るまでの子犬の過ごし方も、その後の犬の成長過程に大きな影響を与えているということが、わかったと思います!
「愛犬を家に迎えてからのしつけが全てではない」
このことはある種真実で、しつけに悩んでいる飼い主さんにとっては非常に救いになる言葉だと思います。
しかし、これだけで終わらせてはいけませんよね!
ドッグトレーナーはもちろん、飼い主さんも、犬のしつけ方がうまくいかない時、今回紹介した様な、犬のバックグラウンドまで考慮した上で、個々にあったペースで慎重にトレーニングを進めていくことが大切です。
人と犬、お互いが気持ち良く共存出来るために、やって欲しくない行動の代わりに、どんな行動を取って欲しいのか、犬に根気よく教えましょう!
トレーニングは、必ず飼い主と犬の絆を強めてくれます。
また、今回の記事の内容は、JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)という団体の第12回JAPDTカンファレンスで聴講した内容を噛み砕いてお話ししたものです。
「もっと犬のことを知りたい!!」
とご興味のある方は、ぜひそうしたペットイベント等にも参加してみてください!
知見がさらに深まると思います。
犬が飼い主を見るのは愛の証?愛犬とのコミュニケーション方法
「愛犬が、特段何もないんだけどじっと見つめてくる!」
こんな経験、したことありませんか?
それ愛犬とコミュニケーションを取れている証拠かもしれません!
一方で、
「愛犬が何を伝えようとしてるのかわからない…」
「うまく愛犬とコミュニケーションが取れているのかわからない…」
という『コミュニケーション』に関する疑問・悩みを抱えている方も多いと思います。
そこで今回は、
・愛犬とコミュニケーションをとることによってどんな良いことがあるか
・愛犬とどんな風にしてコミュニケーションを取れば良いのか
の2つの疑問に関する記事を書いていきたいと思います!
コミュニケーションによって生まれる『オキシトシン』
ところで、皆さんは『オキシトシン』という言葉を聞いたことがありますか?
信頼ホルモン・絆ホルモン、幸せホルモン、愛情ホルモン、癒しホルモンとも呼ばれ、人間の母親が自分の子供を抱っこしたり、恋人同士が手をつないだりスキンシップすると分泌されるホルモンです。
この『オキシトシン』の持つ効果は絶大で、
「幸せな気分をもたらす」
「安心感を与える」
「ストレスを緩和する」
「不安な気持ちや恐怖心を解消する」
「学習意欲や記憶力を向上させる」
「免疫力を高める」
などなどと、こんなにも多くのいいこと尽くしの効果を持っているんです!!!
実はこのオキシトシンが、犬からも分泌されてるんです。
麻布大学の2015年の研究により、人と飼い犬が互いを見つめ合うとオキシトシンの濃度が上昇するという結果が発表されました。
ただし!!!
最も重要で知っておいて欲しいのは、この『オキシトシン』、
普段から飼い主と犬のコミュニケーションが良く取れているペアの間でしか、放出されないんです。
つまり、ただ犬を飼うだけで、たまにしか「見つめる」などのコミュニケーションを取らないペアは、『オキシトシン』は発生しないんです。
『オキシトシン』の素晴らしい恩恵に預かる為にも、
愛犬とは、ただただ日々を過ごすのではなく、きちんと向き合い、積極的に『コミュニケーション』を取って行くことが大切なんですね!!!
どんな『コミュニケーション』をとるべき?
ここまで読むと、
「『コミュニケーション』をとるのが大切なんだ!」
とわかると同時に、
「結局じゃあ、どういう『コミュニケーション』を取れば良いの?」
「そもそも何をすれば、『コミュニケーション』とったって言えるの?」
など、『コミュニケーション』に関する疑問が浮かんでくると思います。
ただ、そうは言ってもこの『コミュニケーション』。
必要以上に難しく考えることはありません。
大切なことは、単純に
「日々、トレーニングを行えば良い」
だけなんです。
日常のトレーニングである、
・スワレ
・フセ
・タッテ
・マテ
・ハウス
などなど…
これらを毎日練習して、犬に教えて、成功したら褒めて一緒に喜んでご褒美をあげる。
これだけで、日々の積み重ねで、愛犬との絆は深まっていくんです。
これこそが、愛犬とのコミュニケーションなんです!
なので、決して、
「ごはんの時間の前だけ、一瞬「お手・おかわり・マテ」をする」
などのようなことは止めましょう!!!
アナタの言葉によく耳を傾け、犬の成功を一緒に喜んで褒めてくれ、ご褒美をくれるという反復練習があってこそ、犬はアナタのことをもっと好きになり、期待し、キラキラとした目で見つめてくれるようになるでしょう。
犬を飼ったなら、たくさんコミュニケーションを取って、お互い見つめ合うだけでオキシトシンの濃度が上昇するような絆を深めましょう!オキシトシンの濃度の上昇は、犬にとっても人にとってもいいこと尽くしなのです。
余談ですが、猫と犬の比較実験をしたところ猫のオキシトシンの濃度の上昇は犬の1/5程度だそうです。つまり、犬は自分たちとは種の違う人間に対して5倍も愛情を注いでくれているということ!犬はとても義理堅く、愛情深い生き物なのです。
また同じ人間の家族内でも、一番犬の世話をして面倒を見ている人と、たいして面倒を見ていない人ではオキシトシンの上昇に差が出るそうです。
世話焼きで犬の面倒を見ている人の方が犬との見つめ合いで比例的にオキシトシンの濃度の上昇が見られるそうです。
一方で、犬から出るオキシトシンについては、同居家族に対して義理堅く、家族によって差がないのだそうです。
日々犬の世話を一手に担っている私からすると、これは少し寂しい気もしますけどね(笑)
終わりに
いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、幸せホルモン『オキシトシン』も発生する、
「犬とコミュニケーションととる大切さ」や、
「そのコミュニケーションは、日常のトレーニングから生まれる」
ということがわかったと思います!
ぜひこのことを意識して、毎日のふれあいの中で、愛犬との絆をより深めて行ってください!!!
(余談ですが、人間はハグされるとオキシトシンが出ますが、犬はハグされるのが嫌いなので、見つめるだけにしてあげてください(笑))
また、今回の記事の内容は、JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)という団体の第12回JAPDTカンファレンスで聴講した内容を噛み砕いてお話ししたものです。
「もっと犬のことを知りたい!!」
とご興味のある方は、ぜひそうしたペットイベント等にも参加してみてください!
知見がさらに深まると思います。
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿
あなたに向いているのはどれ? 『犬のしつけ教室』の種類と効果
あなたに向いているのはどれ? 『犬のしつけ教室』の種類と効果
犬を飼い始めたり、これから飼おうとして、色々情報を手に入れようとすると、
「犬を飼ったらしつけを教えるのが大切!!」
「幼少期だけでも、しつけ教室でしつけを習うべき!!」
など、『しつけ』に関する情報をよく目にすることも多いですよね。
特に、『しつけ教室』に関しては様々な場所で、
「しつけ教室に入れるべき!!!」
という情報が流れています。
しつけ教室に通うこと自体は、とても良いことなのですが…
ただ、いざ調べてみると、
『パピークラス』
『出張レッスン』
などなど
『しつけ教室』の種類が多くでよくわからないことが多いと思います。
そこで今回は、主な『しつけ教室』の種類を7つほどに分類して、その特徴や対象となる犬の属性についてご紹介します!!!
『しつけ教室』の種類
まず、現在、犬のしつけ教室と呼ばれるものには以下のような種類のものが存在します。
- 犬だけが登園する「犬のようちえん」(成犬も含む)
- 犬だけが登園する「パピークラス」
- 犬をスクールに完全に預ける「お預かりトレーニング」
- 飼い主さんが犬と一緒にスクールに通う「パピークラス」
- 飼い主さんが犬と一緒にスクールに通う「グループレッスン」
- 飼い主さんが犬と一緒にスクールに通う「個別レッスン」
- トレーナーに自宅に来てもらう完全マンツーマン「出張トレーニング」
- ペットシッター</li>
- オンラインコーチング(時代の流れですね!)
またトレーニングやしつけは行わないけれど、以下のようなサービスもあります。
〇ペット一時預かり
「え?こんなに種類があるの?」
と驚かれた方もいると思います!
これだけたくさんの種類があるということは、
「自分のライフスタイルに合ったもの」
「犬との未来の理想の生活に近づけるため」
「今現在発生している、犬の困った行動」
「各家庭の望む形態」
などの、改善したいポイントによって、それぞれ適した『しつけ方教室』を自分でで選択できるということです!!!
それでは、どの種類のしつけ教室があなたに適しているのか!
中身を一つ一つ見ていきましょう!
それぞれのしつけ教室の特徴
■犬のようちえん、保育園
共働きで、長時間犬に留守番を強いる環境の方に向いているかもしれません。
また各ご家庭では実行することが難しい犬の社会化期の社会化、犬同士の遊び方を犬に教えたいなど希望している方などにも良いかもしれません。
■お預かりトレーニング
だいたい最短二週間から1カ月単位で犬をスクールに預けて、トレーナーが基本的なトレーニングを犬にする形態。
犬だけの合宿のようなイメージ。
■パピークラス
だいたい生後4ヶ月くらいまで。
もしくはクラスによって生後7ヶ月くらいまでで分けられている。
月齢の近いパピーだけを幼稚園形式でスクールに日中預かり、トレーナーがメインで子犬の社会化を行ったり、基本的なしつけを行う場合もあるが、飼い主さんが自分のパピーを通いでスクールに連れて来て、トレーナーの指導の下ハンドリングしてレッスンを受ける形式もある。
■グループレッスン
飼い主さんが自分の犬とスクールに通い、複数人のグループ形式でレッスンを行う。初心者クラス、基礎クラス、…など飼い主さんと犬のペアのレベルに合わせてクラス分けされている場合が多い。
■スクールに通う個別レッスン
飼い主さんが自分の犬とスクールに通い、トレーナーからマンツーマンで指導を受けることが多い。自宅とは違う刺激の多い環境(スクール内や外)で、飼い主さんと犬が練習出来るのが特徴。
■出張トレーニング
トレーナーが自宅に出張して完全マンツーマンで飼い主さんと犬のペアに指導する形式。犬がいつも過ごす自宅の環境を見て、環境改善のための指導なども行う。
飼い主さんが問題だと感じている点に特化して、自宅だけではなく散歩トレーニングなども一緒に行う。
パピーコースの場合、パピーが優先すべき内容に特化しながら飼い主さんを指導する。飼い主さん自身が犬の学習の仕方などを学ぶことが出来たり、カウンセリング的要素も強い。
■ペットシッター
基本的にトレーニングは行わないが、犬のお世話をメインで行う。
共働きで長時間の留守番を強いられている犬の世話を日中行ったり、お散歩代行を行ったり、旅行中で留守の家のペットの世話や、高齢者で自分の犬の散歩をすることが難しい家の犬のお散歩代行なども行う。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
犬の「しつけ方教室」と一言でいっても、様々な形態があり、飼い主さんが自分で選択出来る事をご理解いただけたと思います!
自分のライフスタイルや、犬の解決したい課題、犬の性格や特徴など、総合的に判断して犬に最も適したしつけ教室を選んであげてください!
最適なしつけ教室を選んであげることによって、犬もちゃんとマナーやルールがわかるようになり、気持ちよく一緒に過ごせるようになります。
この記事が少しでも、あなたの犬のパートナーの関係向上の手助けとなれたら幸いです!
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿
なぜ、犬は散歩をしなければいけないの?
なぜ、犬は散歩をしなければいけないの?
「なぜ犬は散歩しないといけないの?」
「本当に犬に散歩って必要なの?」
「散歩はただ運動させるためだけの時間じゃないの?」
「散歩って犬に排泄させるための時間じゃないの?」
素朴ながらそんな疑問を抱いたことはありませんか?
もちろん、お散歩に出て外を歩いたり、走って動いたり、運動することは大切です!
ワンちゃんたちは四足歩行なの、寝ている時よりも歩いている時の方が、横隔膜や胃腸が活発に動いて、排泄物が促されるなど、様々なメリットもあります。
しかし、ワンちゃんを散歩しなければいけない本当の理由は別にあるんです。
今回は「犬を散歩しないといけない」理由を、理論的な面からご紹介していきます!
アニマルウェルフェアとFive Freedoms
実は、犬には散歩が必要であるということは世界的に動物の福祉を重視する『アニマルウェルフェア』という考え方の中にも指針として基準が設けられています。
『アニマルウェルフェア』とは、世界の動物衛生の向上を目的とする機関のOIE(国際獣疫事務局)が定めた考え方で、
「動物がその生活している環境にうまく対応している態様」
(参照:http://www.oie.int/en/animal-welfare/animal-welfare-key-themes/)
と定義されています。
つまり、犬に当てはめて簡単にいうと「ワンちゃんたちが、生活の中で幸せを感じられている状態」のことです。
さらに、この「幸せを感じられている状態」を作り出すためには、『Five Freedoms』というものが必要になると言われています。
『Five Freedoms』とは、
飢えと渇きからの解放
「正しい食事管理と新鮮な水の保障」
不快からの解放
「清潔で心地よい住環境の保障」
痛み、怪我、病気からの解放
「疾病予防、早期発見、治療の機会の保障」
恐怖と絶望からの解放
「恐怖や精神的苦痛を与えられない保障」
正常な行動を示す自由
「その動物種がもつ生来的行動をとることの保障」
の5つのです。
ちょっと難しい言葉ばかりですよね…
しかし!!!
ここで注目して欲しいのは最後の、
「正常な行動を示す自由=その動物種がもつ生来的行動をとることの保障」
です。
実は、ここに『お散歩』が深く関わっているんです!!
お散歩をすることによって、ワンちゃんたちは生来的行動をとることが保証され、その結果幸せを感じることができるのです。
すなわち、ワンちゃんたちにとって「お散歩=幸せ」というわけなんです!!
散歩でとっている犬の生来的行動
ここからは詳細に、
犬が散歩でとっているこの『生来的行動』について説明していきます。
そもそも、犬の生来的行動、すなわちワンちゃんたちが生まれながらもつ習性とはなんなんでしょうか?
実はそこには様々なことが含まれているんです!
例えば、運動(心拍数を上げる事)・遊び・追跡・探索行動(新しい場所やモノに対し嗅覚や視覚、聴覚、足裏の感触などを使って周囲の環境をチェックする行動・五感を使って様々な刺激に接すること・外部の家の中にはない刺激との関わりにより心の刺激を受けて好奇心を育み満たすことなども生来的行動の一部です。
特に探索行動については、獲物を獲るための本能的な行動であり、犬の好奇心を満たすのにとても重要な行動です。
新しい場所に行けば、その場所がどんな場所なのか、どんなニオイがあるのか、他に動物が居るのか、それとも居たのか、安全な場所なのか危険な場所なのか、主に嗅覚を使い、クンクンウロウロしながら歩き回って探索行動を必ずするものです。
そして鼻を使うということは、犬の脳を使わせて刺激し、長時間の散歩にも匹敵する適度な疲労感を犬に与えてくれます。
犬の脳内でのニオイを処理する部分は、なんと人間の40倍もあるということですから、犬が鼻を使えばグッタリ疲れるのも納得ですよね。
散歩では、
他の犬に出会ったり・他の人に挨拶をしたり・小学生の集団登下校に出会ったり・警備員の人に可愛がってもらったり・猫に出会ったり・四季を感じる様々なニオイに出会い嗅覚を使ったり・・・
ここでは挙げきれないくらい、たくさんの家の中にはない刺激を経験し、それに触れるチャンスがあります。
これらすべてがワンちゃんにとっての生態的行動であり、
故に散歩が、ワンちゃんたちが生態的行動をとることを保証できる理由なんです!
人間の飼育下にある犬ワンちゃんたちから、正常な行動の一つである散歩の時間を奪ってしまうと、ワンちゃんたちに過剰なストレスがかかってしまいます。
ワンちゃんたちが心身ともに幸福な暮らしを送るためには、身体的な健康面だけでなく心も重視してやる必要があります。
これからの散歩はどうしたらいい?
ここまで、ワンちゃんたちは、飼い主以外の人や他のワンちゃんたちと触れ合ったり、いろんな匂いを嗅いだりという生来的行動を取ることで幸せを感じられ、その生来的行動を散歩の中で取っているということをお話ししてきました。
だからワンちゃんたちにとって「散歩=幸せ」というわけなんですね。
これを踏まえて、今後の散歩はどのようにして行けば良いでしょうか?
散歩はワンちゃんたちそれぞれの個体の恐怖心や健康面に十分配慮して行う必要があります。
なので健康面だけでなく、情緒面にも十分配慮しながら、楽しいお散歩が出来ると良いですよね!
もし散歩中、他の犬やその飼い主さんに過剰に吠えたり、外を怖がるなど、ワンちゃんのストレス反応が強過ぎる場合や、散歩中に問題だと感じる部分がある場合は、飼い主さんがワンちゃんにトレーニングをして
「お散歩は楽しいこと!」「他の犬や人は怖くない!」と学習するように時間をかけて改善してあげましょう!
他のワンちゃんや飼い主さんが居ても、
「散歩するのは安全・安心で、とっても楽しいこと!」
とワンちゃんに感じてもらえるようトレーニングして、一緒に探索行動してみるのも良いと思います。
また飼い主にとっても、朝に外を散歩することは幸せホルモンであるセロトニンを増やす効果があると言われています!
セロトニンは精神を安定させたり、良質な睡眠を取るのに大きな役割を果たします。
このようにただ一つ「散歩に行く」ということをとっても、飼い主の考え方次第でこんなにも有意義なものになるんです。
次回から、自分の愛犬と外に出る時は、
「今うちの愛犬は散歩できて幸せなんだな!」
「自分もウォーキングになって生産的な時間だなー!」
というように、散歩自体を楽しんでみてください!
そしてワンちゃんのために、いつもとは違う散歩コースを選んでみたり、緑の多い公園に行ってみたり、行ったことのない新しい街を歩いてみたりしてみませんか?
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿
一度しつけたらもう終わり?〜愛犬にしつけを守り続けてもらうには〜
一度しつけたらもう終わり?〜愛犬にしつけを守り続けてもらうには〜
犬やペットを飼っていると
「ペットを飼うってこんなに大変なの!?」
「自分の生活ペースが乱される!」
「ちゃんということ聞いて欲しい…」
などなど、飼う前は気づかなかった様々な悩みや問題が出てきて、尽きることがないですよね…
そして、どうにも手が焼けて困り果てた上末、しつけ教室に通ったり、ドッグトレーナーに依頼します。
最終的には飼い主さん自身がドッグトレーナーからのアドバイスを元にペットをトレーニングして、言うことを聞いてくれる用になって、
飼い主さんとしてはここで「一息ついた〜〜〜」という感じになりますよね。
わざわざしつけ教室に通って、今までどうにも手に負えなかった自分のペットのワンちゃんがお利口さんになったわけですから当然といえば当然です。
そして最終的にはせっかくしつけ教室やドッグトレーナーから教わった練習を止めてしまう…。
当たり前のように思えるこの一連の流れ。
実はこの『しつけをやめてしまう』ということが『しつけたことをやめさせる』ということにつながってしまうんです!
飼い主さんの多くは、
「一度覚えた行動なら、それはもう一生続くでしょー」
と考えがちですが、実は全くそんなことはないのです!
しつけは『学習』の繰り返し
よくよく考えて見ると、『しつけ』を行うと言うことは、愛犬やペットに対して『学習をさせる』と言うことなんですよね。
『学習』とは、ペットのある行動に対してご褒美を与えることによって、ペットがその行動を覚え習得する方法です。
そして、この学習の大切なポイントは『反復し、継続する』ことなのです!!!
例えば、単に「オスワリ!」という言葉の合図に対して、犬がオスワリをするという行動の反復だけでは学習は起こりづらいのです。
つまり「オスワリ!」という言葉の合図があって、ペットがオスワリすると、ご褒美が貰える、という一連の流れを継続的に反復学習しているペットのワンちゃんは、オスワリしやすくなるということなのです。
では、このオスワリという行動に対して、ご褒美を出さなくなったらどうなるでしょうか?
今まで自分がオスワリするともらえていたご褒美が急にもらえなくなったら、ワンちゃんたちはどう思うでしょうか?
今までもらえていたご褒美が、全く出なくなるという状況が繰り返されると、せっかく学習したオスワリという行動も学習する前と同じくらいやらなくなってしまいます。
この手続きを専門用語では「消去」と呼び、今まで出現していた行動を無くしていく手続きなのです。
つまり上の例でいうと、ワンちゃんに『オスワリをしなくなるよう学習させている』のと同じことなのです。
これってとってももったいないですよね…
今回は「オスワリ」を例にとって説明しましたが、それ以外にもワンちゃんが行う全ての行動について言えることなんです。
一度覚えた行動を、その後も継続的にペットに取ってもらうには、
「この行動を取ると、自分にとって嬉しいご褒美がもらえるぞ!」
とペットが思い続けられるようにすることが大切です。
またご褒美はペットが喜ぶものであれば食べ物とは限りません。
飼い主さんの褒め言葉だったり、撫でてもらうことだったり、一緒に遊んでもらうことだったり、ボールを投げてもらうことだったり、犬の性格と気質、状況によって様々です。
詳細はこちらの記事にも書いてあるので、よかったら参照してみてください。
(「こちらの記事」に「あなたの愛犬へのご褒美、間違ってませんか?」の記事のリンクつけておく)
あなたの愛犬も『やりがい』を求めている
しつけを守り続けてもらうためには、愛犬・ペットが
「こういう行動をすると嬉しいご褒美がもらえるぞ!」
と感じるようなことを継続的に行なうことが大切だと、ここまでで見てきました。
その他にも、その行動を選択すること自体に、ワンちゃんが『やりがい』を感じるように生活の中で気をつけることも重要なんです。
具体的には、
ワンちゃんが自らその行動をすることで、苦手なことを避けられたり、その行動でに自信を持ったりという、いわば「ご褒美だけに寄らない、行動の理由付け」をしてあげることです。難しいと思うのでいくつか例を交えて説明していきたいと思います。
例えば、「知育トイで遊んだ時、知育トイを転がしていたらフードが飛び出して来て、それを食べることが出来た」というのは、先ほど説明した学習と同じです。
図で表すとこんな感じです↓
(フリスビーを知育トイの代わりにしています)
「知育トイを転がす→食べ物が出た」=「知育トイを転がす→ご褒美が出る」という図式が成り立っています。
この行動を繰り返すうちに、知育トイを転がすこと自体が『食べ物の探索行動』としての犬の本能を満たす行動の一つになります。
つまり、『ご褒美を得ること』が目的だった知育トイを転がす行動自体が、犬ワンちゃんにとって本能的にやりがいのある行動に変わるのです。
人で例えると、子供が初めてピアノを弾いた時、親から「良くできたね!上手だね!」と褒められたことが嬉しくて続けるうちに、ピアノの上達自体が子供本人のやりがいになり、ピアノを弾くこと自体に『やりがい』を感じていくのと同じ感じでしょうか。
他にも、他の犬とのすれ違いに恐怖を感じていたワンちゃんが、飼い主さんの足の間にオスワリして他の犬をやり過ごす場合などもその例です。最初はご褒美を使って足の間でオスワリする練習を始めたとしても、繰り返し練習するうちに今まで感じていた不安が飼い主さんの足の間でオスワリすることで少しでも消えたり、他の犬とすれ違ってもその行動を取ることで安心感を得ることがやりがいに繋がります。
宅配便や郵便局、警官など制服を着た人が苦手で吠え掛かってしまう犬の場合は、飼い主さんの合図で楽しくUターンすることをご褒美を使って学習させた後、制服の人に出会っても吠えることなく叱られずに楽しくUターンしてやり過ごせるようになるなどです。
このように、とっかかりは『ご褒美目的』の行為も、継続して行うことで『その行為を行うこと自体が目的』となるようなやりがいを感じさせることも、しつけを継続させるためには重要なんです。
まとめ
愛犬・ペットに一つの行動を教えたからと言って
「覚えたからもう終わり!」
としてご褒美を無くしてしまうと、せっかくできるようになったこともやらなくなってしまいます。
教えらえた行動の後、犬にとって嬉しくないことが起こったり、嬉しいと感じることが起こらなくなった時、犬はその行動を取らなくなっていきます。
犬がしつけで教えた行動をやってくれて当たり前と飼い主さんが思い、褒めるのをやめた時も同様です。
一度覚えたからこそ、その行動を維持させるには継続的な学習が必要であり、ご褒美も必要なのです。
愛犬・ペットとの反復練習は、あなたとの絆をますます深めます。
ご褒美トレーニングで学習させた内容を、実際の生活の場で活かしていくよう心掛けましょう。
お散歩中に勝手にニオイ嗅ぎをさせずに、飼い主さんの横に付いてオスワリ出来たらニオイ嗅ぎのご褒美を与えるなどしてみてもよいでしょう。
オスワリ、マテが出来たら他のワンちゃんとの挨拶が許される、なども犬にとっては、やりがいのある行動です。
オイデの呼び戻しで飼い主さんの元にちゃんと戻ったら、再びドッグラン内に自由にしてもらえ、他の犬との追っかけっこが出来た、などもトレーニングとして良いと思います。
こうすればワンちゃんも飼い主さんに対してよりよい期待感を抱くようになるはずです。
「覚えたら終わり!」ではなく、毎日犬ワンちゃんと向き合ってご褒美トレーニングからやりがいを意識したトレーニングへ移行しながら楽しみましょう!
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿
本当にそれでいいの?意外と知らない正しい犬のトイレとベッドの位置
本当にそれでいいの?意外と知らない正しい犬のトイレとベッドの位置
トレーニングなどで子犬を飼い始めたご家庭に行くと、
「ペットが指定した場所できちんとトイレをしてくれない…」
「サークルの中にいるときは、トイレにおしっこをしてくれるのに、サークルから出すと違う場所でトイレをしてしまう…」
「トイレの上で寝る習慣が犬についてしまった…」と言ったお悩みをよく耳にします。
このような、多くの飼い主さんが心を悩ませている『トイレ』の問題。
どうして、ワンちゃんたちはトイレではない場所でトイレをしてしまうのでしょうか?
今回は、その原因と解決方法について書いていきたいと思います!
トイレ以外で排泄してしまう理由とは?
指定したトイレ以外で排泄してしまうという問題の根本的な原因の一つとして、犬の持つ行動習性(排泄行動)があります。
これは、排泄の際、基本的に自分の居場所を清潔に保とうとする習性のことで、寝床付近で排泄すると外敵から巣穴がみつけやすくなり狙われやすく、それを回避するための、いわば『野生の本能』だとも言われています。
この習性を理解していれば、ワンちゃんをサークルからフリーにした時にトイレを失敗してしまうのも納得が出来ますよね。
ワンちゃんたちは、これから自分が戻される居場所を本能的に汚したくないのです。
さらに、ワンちゃんたちはサークル内の排泄場所をトイレシーツの足の感触や匂いで覚えています。
これによって習慣的にサークル内でトイレをしていると足裏で感じる感触で、ほとんど反射に近い形でトイレをしてしまうのです。
キッチンマットや、バスマット、ラグ、カーペット、毛布、バスタオルなどフカフカした感触のモノの上で、誤ってトイレをしてしまうことが多いのはこのためなんです!
このようにワンちゃんたちは、本能的に、また習慣的なことが原因で間違った場所でトイレをしてしまうことがあるので、決められた位置でトイレをできるようになるまでは、マットやカーペットなど、足裏の感触がトイレシーツに似ているモノは片付けることもお勧めします。
また、上記の理由以外にも
「飼い主さんの顔を見ながらトイレの失敗をしたら、大騒ぎで片付けに来て構ってもらった」などとワンちゃんが感じると、
「違った場所でトイレをすることによって構ってもらえる!」と思ってしまい、決められた場所でトイレをしないということもあり得るので気を付けましょう!
トイレを決めた場所できちんとしてもらうには?
では実際に、指定した場所できちんとトイレをしてもらうにはどうしたら良いのでしょうか?
決められた位置でトイレができるようになるためには「ワンちゃんが普段生活するスペースとその周りの環境を見直し、行動の制限をして間違った場所での排泄という失敗の学習を防ぐ」ということにつきます。
ちょっと長くて分かりづらいですよね…笑
なので以下大きく2つに分けて細かく見ていきましょう。
ワンちゃんが普段生活するスペースとその周りの環境を見直す
まず決められた位置でトイレをできるようにするためには
『寝床とトイレの場所を明確に分けること』
が大切です。
そのために使いやすいのは、クレートです。
クレートとは、外側四方が固いプラスチックで囲まれていて開閉部分が鉄格子で出来ているキャリーケースのことで、元来暗い巣穴を好むワンちゃんにとって安全で安心できるベッド代わりになり、自宅での寝床にも移動の際の持ち運びケースにもなるものです。
代表的な商品としてはpetmate社のバリケンネルやリッチェル社のキャンピングキャリー、アイリスオーヤマ社のエアトラベルキャリーなどの商品があります。
このクレートを居場所と認識し、そこを寝床とすることを犬が快適に感じられるように行うトレーニングをクレートトレーニングと呼びます。
クレートはワンちゃんの寝床になるものとして区別するのに明確なので、クレートトレーニングを行うことはトイレを正しい場所でしてもらうのに、大いに役立ちます。
基本的な生活以外でも、長時間の留守番などを強いられる場合には、ベッドに隣接してすぐトイレがあるなどの環境にならないように広めのサークルかケージを用意して、その中にクレートやベッドを入れ、同じサークルやケージ内でも、その居住空間から一番遠い場所にトイレを設置すると良いです。
まずはワンちゃん犬がきちんとトイレをしやすい環境設定をしてもらうことが大切です。
私がトレーニングの相談を受けるときにも、生徒さんにこのアドバイスをして、サークルに囲まれたトイレだけを用意してもらい、クレートトレーニングを同時に行っていますいます。
※クレート・サークル・ケージの違い
クレートは上記の説明のとおり。
サークルは言葉の意味通り「囲む」道具です。素材はメッシュやプラスチック、鉄など様々で屋根は無く、上から犬の世話をすることが可能。パーツを組み合わせたり動かしたり出来るのでスペースを自由に使える。
ケージはいわゆる鉄の檻のようなもの。屋根があり四方が鉄格子で囲まれているタイプ。
行動を制限して失敗の学習を防ぐ
寝床とトイレを分け、ワンちゃんの生活スペースと環境を見直したら、ワンちゃんがその環境で『設置したトイレ以外の間違った場所でのトイレの失敗(失敗の学習)』を繰り返さないよう行動管理をしていきましょう。
ワンちゃんがトイレをするタイミングは、
「寝起き」「運動や散歩・遊びの後」「水を飲んだ後や食後」「クレートなどの狭い場所から広い場所に出た時」「日々決まった時間」など、ある程度予測出来ますので、その時間に決められたトイレに誘導してあげることで、正しいトイレの場所を覚えてもらうことができます。
また子犬が排泄を我慢できる時間の目安として、
日中は「月齢+1時間」
夜間は「(月齢+1)×1.5時間」
と言われています。
なので、この時間を参考にしてトイレに誘導しても良いでしょう。
また他の場所でトイレをしてしまうのを防ぐために、短時間でも犬ワンちゃんをフリーにする場合は、決して犬から目を離さず、クレートに入れるなど細心の注意を払ってください!
このように環境をきちんと整えて、犬ワンちゃんの行動管理をすると、犬ワンちゃんのトイレの失敗問題(マーキングを除く)が解決します!
また人間よりも嗅覚の優れた犬です。
排泄物の処理はしっかりと行いましょう!排泄物のニオイが残っていると、そのニオイでトイレがしたくなってしまうので、消臭スプレーなどを利用して、汚れはもちろんニオイを取り去るように気を付けましょう!
まとめ
以上、ワンちゃんが違った場所でトイレをしてしまう理由とその解決方法について見てきました。
「うちの子はちゃんと決めた場所でトイレをしてくれない…」
と頭を悩ませている方は、まずはワンちゃんが寝床として生活している居住空間の見直しをしてみましょう。
『寝床とトイレは明確に分けて用意してあげること。』
これが大切です。
そして間違った場所でのトイレの失敗を繰り返さないようワンちゃんの行動管理をすることも忘れずに!
またトイレを指定の場所でさせるトレーニングとは別の問題ですが、サークルで子犬を育てると、いつも人の手が上から伸びてきて子犬の世話をするため、ワンちゃんが人の手にじゃれたり甘噛みしたり、飛び付き癖が付きやすくなります。
ペットシーツにいたずらしたりなど、望ましくない行動の学習もしやすいので、こういった観点からも「クレート」と「トイレ」、もしくは「寝床とは別にサークルで囲ったトイレ」と「寝床」のような、寝床とトイレを明確に分けた環境を用意してあげた方が、ワンちゃんが望ましい行動を学習する手助けになりますので、トイレトレーニングも早く済み、お互いのストレスも減り、人間とワンちゃんともに時間的にも早く自由が与えられるのではないかと思います。
より良い関係が築けるのではないでしょうか?
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿
ご褒美はフードだけじゃない!?愛犬が言うことを聞く『ご褒美トレーニング』とは
「あなたの愛犬へのご褒美の上げ方、間違ってませんか?」
突然ですが、あなたは『ご褒美』という言葉で何をイメージしますか?
多くの人は、ワンちゃんが何か約束を守れた時やきちんということを聞いた時にあげるおやつやフードをイメージするのではないでしょうか?
フードをあげるとほとんどのワンちゃんたちは喜ぶため、そう考えるのは普通ですよね。
フードはワンちゃんたちにとっても「生理学的欲求」に合致しているため、無条件に喜ぶのです。
つまり生きるために必要不可欠な欲求の一つなのです!
(この生理的欲求に直結する食べ物や水のことを『無条件性強化子』と呼びます。簡単にいうと、生きるために絶対必要なもので生きる原動力になる刺激のことで、無ければ生死に関わるものです。
だから「ご褒美=フード」というイメージが皆さんの中には強いのかもしれません。)
しかし実はワンちゃんが欲しているご褒美はフードだけではないのです。
時と場合によってはワンちゃんたちはフードやおやつを欲していない場合さえあるのです!
そこで今回は
「ご褒美=フードやおやつだけ じゃない!」ということをお伝えするために『陽性強化』という考え方についてご説明していきます。
『陽性強化』とは?
陽性強化という言葉は
あまり耳馴染みのない言葉のため、
「陽性強化って何?」
と疑問を抱く方も多いと思います。
本臨床獣医学フォーラム代表の石田卓夫氏によると、『陽性強化』とは
犬のしつけやトレーニングで使われる方法の1つで、ペットのしつけをする際の基本的な考え方。犬の自発的な良い行動をほめ、さらに良い結果を誘導する反応強化法として確立している。陽性強化をする場合には、犬の動機づけ(注目をさせ集中させる)にモチベーター(ほうび)を与える。モチベーターは、ほめる、愛撫、散歩、おもちゃ、食べ物など。
(石田卓夫 日本臨床獣医学フォーラム代表 / 2007年)
*1
と定義付けられています。
つまり『陽性強化』とは、ワンちゃんが自ら行った良い行動に対して色々なご褒美をあげることによって褒めて、さらに良い行いをするようにつなげていくしつけ方法なんです。
「陽性強化=必ずおやつやフードを使う」というわけではないのです!
『ご褒美』の種類とあげるタイミング
ここまでで、『陽性強化』を行うためのご褒美として、フード以外にもたくさんのものがあるということがわかりました。
しかしこれだけ聞いても、
「どういう時に・どんなタイミングで・どんなご褒美をあげたらいいの?」
と悩んでしまいますよね…
『ご褒美』のタイミングを見極める!
『陽性強化』では、「その時・その瞬間にワンちゃんを囲んでいる環境や状況によって、ワンちゃんが欲する報酬がその都度変わります。これは人間も同じですよね。
例えば、
「大福が大好き!」という人にとって、お腹が空いてる時に「これやってくれたら大福あげるよ?」と言われれば、大福欲しさに頼みごとを聞いてしまいますよね(笑)
しかし、満腹時ではどうでしょうか?
毎日毎日大福を、「もう要らない!!!」と思うまで食べさせられている人にとってはどうでしょうか?
はたまた、病院での検診前や、大事な会議の前の緊張している時に「大福あげるよ!」と言われて素直に喜べるでしょうか?
当然ですが時と場合によって、好きなものでも「いらない」「欲しくない」という状況はありますよね。そんな状況・環境において大福はご褒美に感じられませんよね…
このように、満腹状態なのかどうか・食べ飽きていないかどうかなど本人の飽和状態にも左右されますし、睡眠不足や健康状態の問題がないかどうかなどの内面的な問題で大福がご褒美になるかどうかは変わってきます。
また、通常はご褒美と感じる大福でも、それよりも優先すべきことがあるような環境下では、大福はご褒美にはなりません。
つまり、ご褒美をあげるタイミングは一概に「これ!」というものはなく、ワンちゃんの様子を見てきちんと判断することが大切なのです。
求められているご褒美を見極める!
ここまで、「ワンちゃんの様子を見てきちんと判断」してご褒美をあげる大切さをお伝えしてきました。あとは「どんなご褒美をあげたらいいのか」が気になりますよね!
冒頭の『陽性強化』とは?では、ワンちゃんがご褒美と感じるものはフードだけではないということをお伝えしました。
ある状況や環境ではフードやおやつよりも目の前のボールで遊んで欲しかったり、フードやおやつよりも、大好きな飼い主さんに飛び付くことがご褒美だと感じるかもしれません。
はたまた、日常からフードやおやつをもらうことよりも飼い主さんに抱っこされるのが何よりも好きだと感じているワンちゃんの場合はフードやおやつをもらうよりも撫でてもらったり、遊んでもらうほうがご褒美だと感じるかもしれません。
何をご褒美としてあげるかは、ワンちゃんの性格や気質と、ワンちゃんの周りの状況や環境によっても大きく変化します。つまり、性格などの内的な要因と外的な要因の両方が影響しているのです。
目の前にいつもお肉をくれる大好きな人がいるとか、目の前にいつも一緒に遊ぶワンちゃんの友達がいる時にドッグフード一粒でオスワリさせようと思っても、見向きもしてくれないのは「フードが好き!」という内的な感情よりも「あの人と遊びたい!」と言った外的要因が大きいからなんです。
これは人間の子供もおんなじですよね。
「キャンディをあげるから大人しく座っていてね」と自宅で言えば聞いてくれるかもしれませんが、遊園地に入園した直後に同じお願いをしても聞いてはくれないでしょう。
裏を返せば、「目の前にいるお肉をくれる大好きな人」や「いつも一緒に遊ぶ友達」こそ、ワンちゃんにとってその瞬間の最大のご褒美に為り得るということです。
つまり、ワンちゃんの様子を見て判断し、さらにその子の性格や気質も踏まえた上で「その瞬間に、その子が一番喜ぶこと」をご褒美としてあげるのが大切ということです!
最後に〜一番大切なこと〜
このようなプロセスで『陽性強化』は行われています。
みなさんも『陽性強化』の行い方を一通り理解していただけましたか?
理解しても実際行うのは難しい面もありますよね…
特に、『陽性強化』では「ワンちゃんのことを深く理解して、その行動や状況・環境を観察してからベストなご褒美を考えて決める」というものなので、正解にたどり着くまでには多くの経験を必要とします。
ご褒美を与えたことで、
「直前の行動が増えた?減った?」
「愛犬から居心地が悪いようなサインは出されていない?」
などをその都度見極める必要があります。
そしてその行動をワンちゃん自身が自発的に行いたいと思えるようになるまで飼い主さんが常にワンちゃんを観察し、考えてご褒美を提供しなければなりません。
もちろんワンちゃんを取り囲む環境を整えながら接トレーニングする必要があります。
ワンちゃんがご褒美を嬉しいもの、喜ばしいものとして受け取った時、その直前の行動は繰り返されたり、頻繁に行うようになります。
ご褒美として感じているものがフードではない場合、何がワンちゃんの行動のモチベーションになっているのか、客観的によく観察して考えてみましょう。
ワンちゃんのモチベーションになっているものを理解し、タイミングよく提供できる飼い主になれば、ワンちゃんはあなたをもっと信頼し、望ましい行動を起こしてくれ、より良い関係を築いていくことができます。
『フードだけではない、ご褒美トレーニング』是非やってみてください!!!
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿