ご褒美はフードだけじゃない!?愛犬が言うことを聞く『ご褒美トレーニング』とは

「あなたの愛犬へのご褒美の上げ方、間違ってませんか?」

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突然ですが、あなたは『ご褒美』という言葉で何をイメージしますか?

多くの人は、ワンちゃんが何か約束を守れた時やきちんということを聞いた時にあげるおやつやフードをイメージするのではないでしょうか?

 

フードをあげるとほとんどのワンちゃんたちは喜ぶため、そう考えるのは普通ですよね。

 

フードはワンちゃんたちにとっても「生理学的欲求」に合致しているため、無条件に喜ぶのです。


つまり生きるために必要不可欠な欲求の一つなのです!

(この生理的欲求に直結する食べ物や水のことを『無条件性強化子』と呼びます。簡単にいうと、生きるために絶対必要なもので生きる原動力になる刺激のことで、無ければ生死に関わるものです。

 


だから「ご褒美=フード」というイメージが皆さんの中には強いのかもしれません。)

しかし実はワンちゃんが欲しているご褒美はフードだけではないのです。
時と場合によってはワンちゃんたちはフードやおやつを欲していない場合さえあるのです!

 

 

そこで今回は
「ご褒美=フードやおやつだけ じゃない!」ということをお伝えするために『陽性強化』という考え方についてご説明していきます。

 

 

『陽性強化』とは?

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陽性強化という言葉は
あまり耳馴染みのない言葉のため、
「陽性強化って何?」
と疑問を抱く方も多いと思います。

 

本臨床獣医学フォーラム代表の石田卓夫氏によると、『陽性強化』とは

 

犬のしつけやトレーニングで使われる方法の1つで、ペットのしつけをする際の基本的な考え方。犬の自発的な良い行動をほめ、さらに良い結果を誘導する反応強化法として確立している。陽性強化をする場合には、犬の動機づけ(注目をさせ集中させる)にモチベーター(ほうび)を与える。モチベーターは、ほめる、愛撫、散歩、おもちゃ、食べ物など。

(石田卓夫 日本臨床獣医学フォーラム代表 / 2007年)

 
*1
と定義付けられています。


つまり『陽性強化』とは、ワンちゃんが自ら行った良い行動に対して色々なご褒美をあげることによって褒めて、さらに良い行いをするようにつなげていくしつけ方法なんです。
「陽性強化=必ずおやつやフードを使う」というわけではないのです!

 

 

 

 


『ご褒美』の種類とあげるタイミング

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ここまでで、『陽性強化』を行うためのご褒美として、フード以外にもたくさんのものがあるということがわかりました。

 


しかしこれだけ聞いても、

「どういう時に・どんなタイミングで・どんなご褒美をあげたらいいの?」
と悩んでしまいますよね…

 

 

『ご褒美』のタイミングを見極める!

『陽性強化』では、「その時・その瞬間にワンちゃんを囲んでいる環境や状況によって、ワンちゃんが欲する報酬がその都度変わります。これは人間も同じですよね。

 

例えば、
「大福が大好き!」という人にとって、お腹が空いてる時に「これやってくれたら大福あげるよ?」と言われれば、大福欲しさに頼みごとを聞いてしまいますよね(笑)

 

しかし、満腹時ではどうでしょうか?

 

毎日毎日大福を、「もう要らない!!!」と思うまで食べさせられている人にとってはどうでしょうか?


はたまた、病院での検診前や、大事な会議の前の緊張している時に「大福あげるよ!」と言われて素直に喜べるでしょうか?

 

当然ですが時と場合によって、好きなものでも「いらない」「欲しくない」という状況はありますよね。そんな状況・環境において大福はご褒美に感じられませんよね…

 


このように、満腹状態なのかどうか・食べ飽きていないかどうかなど本人の飽和状態にも左右されますし、睡眠不足や健康状態の問題がないかどうかなどの内面的な問題で大福がご褒美になるかどうかは変わってきます。

 

また、通常はご褒美と感じる大福でも、それよりも優先すべきことがあるような環境下では、大福はご褒美にはなりません。

つまり、ご褒美をあげるタイミングは一概に「これ!」というものはなく、ワンちゃんの様子を見てきちんと判断することが大切なのです。

 

 

 

求められているご褒美を見極める!

ここまで、「ワンちゃんの様子を見てきちんと判断」してご褒美をあげる大切さをお伝えしてきました。あとは「どんなご褒美をあげたらいいのか」が気になりますよね!


冒頭の『陽性強化』とは?では、ワンちゃんがご褒美と感じるものはフードだけではないということをお伝えしました。

 

ある状況や環境ではフードやおやつよりも目の前のボールで遊んで欲しかったり、フードやおやつよりも、大好きな飼い主さんに飛び付くことがご褒美だと感じるかもしれません。


はたまた、日常からフードやおやつをもらうことよりも飼い主さんに抱っこされるのが何よりも好きだと感じているワンちゃんの場合はフードやおやつをもらうよりも撫でてもらったり、遊んでもらうほうがご褒美だと感じるかもしれません。

 

何をご褒美としてあげるかは、ワンちゃんの性格や気質と、ワンちゃんの周りの状況や環境によっても大きく変化します。つまり、性格などの内的な要因と外的な要因の両方が影響しているのです。


目の前にいつもお肉をくれる大好きな人がいるとか、目の前にいつも一緒に遊ぶワンちゃんの友達がいる時にドッグフード一粒でオスワリさせようと思っても、見向きもしてくれないのは「フードが好き!」という内的な感情よりも「あの人と遊びたい!」と言った外的要因が大きいからなんです。

 

これは人間の子供もおんなじですよね。

 

「キャンディをあげるから大人しく座っていてね」と自宅で言えば聞いてくれるかもしれませんが、遊園地に入園した直後に同じお願いをしても聞いてはくれないでしょう。

裏を返せば、「目の前にいるお肉をくれる大好きな人」や「いつも一緒に遊ぶ友達」こそ、ワンちゃんにとってその瞬間の最大のご褒美に為り得るということです。


つまり、ワンちゃんの様子を見て判断し、さらにその子の性格や気質も踏まえた上で「その瞬間に、その子が一番喜ぶこと」をご褒美としてあげるのが大切ということです!

 


最後に〜一番大切なこと〜

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このようなプロセスで『陽性強化』は行われています。

 

みなさんも『陽性強化』の行い方を一通り理解していただけましたか?


理解しても実際行うのは難しい面もありますよね…
特に、『陽性強化』では「ワンちゃんのことを深く理解して、その行動や状況・環境を観察してからベストなご褒美を考えて決める」というものなので、正解にたどり着くまでには多くの経験を必要とします。

 

ご褒美を与えたことで、
「直前の行動が増えた?減った?」
「愛犬から居心地が悪いようなサインは出されていない?」
などをその都度見極める必要があります。

 

そしてその行動をワンちゃん自身が自発的に行いたいと思えるようになるまで飼い主さんが常にワンちゃんを観察し、考えてご褒美を提供しなければなりません。

 

もちろんワンちゃんを取り囲む環境を整えながらレーニングする必要があります。

 

ワンちゃんがご褒美を嬉しいもの、喜ばしいものとして受け取った時、その直前の行動は繰り返されたり、頻繁に行うようになります。

 

ご褒美として感じているものがフードではない場合、何がワンちゃんの行動のモチベーションになっているのか、客観的によく観察して考えてみましょう。

 

ワンちゃんのモチベーションになっているものを理解し、タイミングよく提供できる飼い主になれば、ワンちゃんはあなたをもっと信頼し、望ましい行動を起こしてくれ、より良い関係を築いていくことができます。


『フードだけではない、ご褒美トレーニング』是非やってみてください!!!

 

 

【栗林 純子】

1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカーレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。

 

著書:犬から見える飼い主の姿