本当にそれでいいの?意外と知らない正しい犬のトイレとベッドの位置
本当にそれでいいの?意外と知らない正しい犬のトイレとベッドの位置
トレーニングなどで子犬を飼い始めたご家庭に行くと、
「ペットが指定した場所できちんとトイレをしてくれない…」
「サークルの中にいるときは、トイレにおしっこをしてくれるのに、サークルから出すと違う場所でトイレをしてしまう…」
「トイレの上で寝る習慣が犬についてしまった…」と言ったお悩みをよく耳にします。
このような、多くの飼い主さんが心を悩ませている『トイレ』の問題。
どうして、ワンちゃんたちはトイレではない場所でトイレをしてしまうのでしょうか?
今回は、その原因と解決方法について書いていきたいと思います!
トイレ以外で排泄してしまう理由とは?
指定したトイレ以外で排泄してしまうという問題の根本的な原因の一つとして、犬の持つ行動習性(排泄行動)があります。
これは、排泄の際、基本的に自分の居場所を清潔に保とうとする習性のことで、寝床付近で排泄すると外敵から巣穴がみつけやすくなり狙われやすく、それを回避するための、いわば『野生の本能』だとも言われています。
この習性を理解していれば、ワンちゃんをサークルからフリーにした時にトイレを失敗してしまうのも納得が出来ますよね。
ワンちゃんたちは、これから自分が戻される居場所を本能的に汚したくないのです。
さらに、ワンちゃんたちはサークル内の排泄場所をトイレシーツの足の感触や匂いで覚えています。
これによって習慣的にサークル内でトイレをしていると足裏で感じる感触で、ほとんど反射に近い形でトイレをしてしまうのです。
キッチンマットや、バスマット、ラグ、カーペット、毛布、バスタオルなどフカフカした感触のモノの上で、誤ってトイレをしてしまうことが多いのはこのためなんです!
このようにワンちゃんたちは、本能的に、また習慣的なことが原因で間違った場所でトイレをしてしまうことがあるので、決められた位置でトイレをできるようになるまでは、マットやカーペットなど、足裏の感触がトイレシーツに似ているモノは片付けることもお勧めします。
また、上記の理由以外にも
「飼い主さんの顔を見ながらトイレの失敗をしたら、大騒ぎで片付けに来て構ってもらった」などとワンちゃんが感じると、
「違った場所でトイレをすることによって構ってもらえる!」と思ってしまい、決められた場所でトイレをしないということもあり得るので気を付けましょう!
トイレを決めた場所できちんとしてもらうには?
では実際に、指定した場所できちんとトイレをしてもらうにはどうしたら良いのでしょうか?
決められた位置でトイレができるようになるためには「ワンちゃんが普段生活するスペースとその周りの環境を見直し、行動の制限をして間違った場所での排泄という失敗の学習を防ぐ」ということにつきます。
ちょっと長くて分かりづらいですよね…笑
なので以下大きく2つに分けて細かく見ていきましょう。
ワンちゃんが普段生活するスペースとその周りの環境を見直す
まず決められた位置でトイレをできるようにするためには
『寝床とトイレの場所を明確に分けること』
が大切です。
そのために使いやすいのは、クレートです。
クレートとは、外側四方が固いプラスチックで囲まれていて開閉部分が鉄格子で出来ているキャリーケースのことで、元来暗い巣穴を好むワンちゃんにとって安全で安心できるベッド代わりになり、自宅での寝床にも移動の際の持ち運びケースにもなるものです。
代表的な商品としてはpetmate社のバリケンネルやリッチェル社のキャンピングキャリー、アイリスオーヤマ社のエアトラベルキャリーなどの商品があります。
このクレートを居場所と認識し、そこを寝床とすることを犬が快適に感じられるように行うトレーニングをクレートトレーニングと呼びます。
クレートはワンちゃんの寝床になるものとして区別するのに明確なので、クレートトレーニングを行うことはトイレを正しい場所でしてもらうのに、大いに役立ちます。
基本的な生活以外でも、長時間の留守番などを強いられる場合には、ベッドに隣接してすぐトイレがあるなどの環境にならないように広めのサークルかケージを用意して、その中にクレートやベッドを入れ、同じサークルやケージ内でも、その居住空間から一番遠い場所にトイレを設置すると良いです。
まずはワンちゃん犬がきちんとトイレをしやすい環境設定をしてもらうことが大切です。
私がトレーニングの相談を受けるときにも、生徒さんにこのアドバイスをして、サークルに囲まれたトイレだけを用意してもらい、クレートトレーニングを同時に行っていますいます。
※クレート・サークル・ケージの違い
クレートは上記の説明のとおり。
サークルは言葉の意味通り「囲む」道具です。素材はメッシュやプラスチック、鉄など様々で屋根は無く、上から犬の世話をすることが可能。パーツを組み合わせたり動かしたり出来るのでスペースを自由に使える。
ケージはいわゆる鉄の檻のようなもの。屋根があり四方が鉄格子で囲まれているタイプ。
行動を制限して失敗の学習を防ぐ
寝床とトイレを分け、ワンちゃんの生活スペースと環境を見直したら、ワンちゃんがその環境で『設置したトイレ以外の間違った場所でのトイレの失敗(失敗の学習)』を繰り返さないよう行動管理をしていきましょう。
ワンちゃんがトイレをするタイミングは、
「寝起き」「運動や散歩・遊びの後」「水を飲んだ後や食後」「クレートなどの狭い場所から広い場所に出た時」「日々決まった時間」など、ある程度予測出来ますので、その時間に決められたトイレに誘導してあげることで、正しいトイレの場所を覚えてもらうことができます。
また子犬が排泄を我慢できる時間の目安として、
日中は「月齢+1時間」
夜間は「(月齢+1)×1.5時間」
と言われています。
なので、この時間を参考にしてトイレに誘導しても良いでしょう。
また他の場所でトイレをしてしまうのを防ぐために、短時間でも犬ワンちゃんをフリーにする場合は、決して犬から目を離さず、クレートに入れるなど細心の注意を払ってください!
このように環境をきちんと整えて、犬ワンちゃんの行動管理をすると、犬ワンちゃんのトイレの失敗問題(マーキングを除く)が解決します!
また人間よりも嗅覚の優れた犬です。
排泄物の処理はしっかりと行いましょう!排泄物のニオイが残っていると、そのニオイでトイレがしたくなってしまうので、消臭スプレーなどを利用して、汚れはもちろんニオイを取り去るように気を付けましょう!
まとめ
以上、ワンちゃんが違った場所でトイレをしてしまう理由とその解決方法について見てきました。
「うちの子はちゃんと決めた場所でトイレをしてくれない…」
と頭を悩ませている方は、まずはワンちゃんが寝床として生活している居住空間の見直しをしてみましょう。
『寝床とトイレは明確に分けて用意してあげること。』
これが大切です。
そして間違った場所でのトイレの失敗を繰り返さないようワンちゃんの行動管理をすることも忘れずに!
またトイレを指定の場所でさせるトレーニングとは別の問題ですが、サークルで子犬を育てると、いつも人の手が上から伸びてきて子犬の世話をするため、ワンちゃんが人の手にじゃれたり甘噛みしたり、飛び付き癖が付きやすくなります。
ペットシーツにいたずらしたりなど、望ましくない行動の学習もしやすいので、こういった観点からも「クレート」と「トイレ」、もしくは「寝床とは別にサークルで囲ったトイレ」と「寝床」のような、寝床とトイレを明確に分けた環境を用意してあげた方が、ワンちゃんが望ましい行動を学習する手助けになりますので、トイレトレーニングも早く済み、お互いのストレスも減り、人間とワンちゃんともに時間的にも早く自由が与えられるのではないかと思います。
より良い関係が築けるのではないでしょうか?
【栗林 純子】
1972年生まれ。国立大学卒業後、大手金融サービス業の会社員を経てドッグトレーニングの世界に入る。家庭犬訓練所に入所し、実務経験を積む。ドッグスクールのインストラクターを経て、クリッカートレーニングを学ぶためにイギリスに短期留学。2004年に「空ドッグスクール」を立ち上げ独立。その後、犬の行動学を学び、米国CCPDT(Certification Council for Professional Dog Trainers)認定CPDT-KA国際ライセンスを取得。現在JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の事業企画委員を務める。空ドッグスクール代表兼ドッグトレーナー。
著書:犬から見える飼い主の姿